健康経営 第7回
社会保険労務士 江尻事務所(健康経営アドバイザー 江尻育弘(東京商工会議所・認定番号 19000112))は沖縄県内でより多くの企業に「健康」について知ってもらい、取り組んでもらうことができれば、県内の労働環境の改善につながると考えております。(「健康経営について」を読む ›)
従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康に関して投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。
沖縄にやってくるプロのスポーツ選手のコンディションを管理されている株式会社ヘルスケアグループファルコン 代表取締役の磯谷貴之様に、ご専門である身体の健康についてコラムを寄せていただいております。
新型コロナウイルス感染症の流行のため、外出もできず自宅に籠りきりになり、ストレスを抱えている方も多くいらっしゃるかと思います。その結果、心身のバランスを崩してしまう人たちも中にはいるのではないでしょうか。連載第7回からはこのコロナ禍における、「運動の役割」や「運動によって心身を整える」ことを中心にお話しいただきます。
連載第7回は「「運動が最強ツール」と改めて感じた、コロナ禍のいま」です。
「運動が最強ツール」と改めて感じた、コロナ禍のいま
「危機に備え、体を整える」
2020年は「東京五輪」で日本中が熱狂する一年になると誰もが思っていましたが、 「コロナウイルス」によって五輪だけでなく様々なことが変化を求められる状況になりました。
我々の業種もスポーツクラブから感染者が出たことを発端に、自主休業を求められる状況にな り、私のパーソナルトレーニングジムも約一ヶ月半休業させていただき、7月現在ではようやく8 割ほど経営状態も回復してきたところです。
「まさかの」コロナ状況と思いたいところですが、歴史をさかのぼれば今回のようなトラブルは今後も必ず起きることは明らかです。
記憶に新しいのは東日本大震災ですが、さかのぼればリーマンショック、バブル崩壊、オイルショックなど、経済危機は定期的に訪れるのが「普通」と考えていた方が良いでしょう。
こういう危機に備え、「貯蓄をしておこう」「新しいビジネスを用意しておこう」
という話題になりますが、それ以前に、
「自分自身の体を日頃から整えておこう」ということを、トレーナーとして強く提案したいと考えています。
「健康=自分自身の取り組みでなんとかなるもの」
まず今回のコロナウイルスで重症化しやすいケースとして、
持病持ち:糖尿病、心疾患、呼吸器系など
免疫力低下:高齢者、妊婦、喫煙者
などが挙げられます。
何が言えるかというと、(先天的な持病をお持ちの方は例外として)日頃から規則正しい生活習慣(食生活、睡眠時間)や運動習慣があり、「ADL(日常生活動作)」「免疫力」の低下を防ぐためにコンディションを整えている方たちは、それだけで感染リスクが少ないのです。
「感染源」は特定できないことも多々ありますし、いつ収束するのかも我々一般人にはわかりませんが、「感染リスク」を低下させることは自身の取り組みでなんとかすることができるのです。
常々トレーナーとして、また会社経営者としても
「自分自身でなんとかできることには努力する」
というスタンスでいます。
そして「健康」でいることは、現代では自分自身の努力次第でなんとかなることが多いのです。
なぜなら現代の不調の多くが「生活習慣の崩れ」や「運動不足」に原因があるからです。
「トラブルに対応できる体の状態かどうか」
例えば、コロナのような感染症だけではなく、地震などの思わぬ災害が今後訪れたときに、
・自力で避難できる体の状態であるのか
・避難所生活に耐えれる健康状態かどうか
を今一度考える必要があります。
・日頃から体力不足、筋力不足を感じている
・日常動作で痛みを感じる部位がある(肩、膝、腰)
・慢性的な体調不良を感じながら仕事をしている(頭痛、めまい、不眠など)
上記のような方々は今回のようなトラブルが起きる前から、健康に近付ける努力をする必要があります。なぜなら健康は1日、2日で手に入れられないからです。生活【習慣】、運動【習慣】というように、習慣になるまで日頃から備える必要があるのです。
日本人はお金の貯蓄に関しては世界でもトップクラスだと思いますが、「体へ投資する」という感覚はまだまだ低いと感じます。
トラブルに備えてお金の貯蓄だけでなく、健康も「貯蓄」しておく必要があります。
すべての人にとって「体は資本」です。
心身のストレスを日常から解消しておく必要性
健康を私個人の見解でいえば「日常生活に支障がないこと」です。
朝起きてから夜寝るまで、家事やお仕事やプライベートなど様々な予定があると思いますが、体のどこにもストレスがなければ「日常生活に支障がない」=「健康」と言えます。
ここでいうストレスは「体」はもちろん、「心」にもストレスがない状態です。
今回のコロナ自粛により自宅待機する時間が増えた方も多かったと思いますが、その生活に強いストレスを感じた方もいれば、うまく対応できた方もいると思います。
これらは日頃から「心の状態」が整っているかどうかが大きく左右したと思います。
ストレスの大きい小さいは、個々の「感じ方」次第です。
同じ現象が目の前に起きても、ストレスを強く感じる人もいれば、ストレスを感じない、もしくは流せる人もいるのです。
そして「心」と「体」は別々に切り離せるものではなく、密接に関係するものです。
体のどこかに痛みを感じた生活を続けていれば、それが慢性的な心のストレスになりますし、精神的に強いストレスを感じていれば、体にも異常が出ます。
「腰痛の多くの原因は精神的ストレス」とさえ言われます。
「運動が最強ツールと呼べる理由」
つまり日頃から心と体を整える必要があり、それを同時に整えられるのが「運動」です。
「運動はストレス解消への最強ツール」とさえ感じています。
デスクワークで筋肉が凝り固まり、歪んでしまった姿勢を「ストレッチ」で整え、自宅と職場を車通勤で往復する事で体力不足、筋力不足になった状態を「筋力トレーニング」で回復させ、 目まぐるしく忙しい日々に疲弊し、未来のことなど考えれられない思考状態を、運動中に分泌される「エンドルフィン」というホルモンで気持ちを前向きにさせてくれ、 職場での人間関係で抱えたストレスは「セロトニン」というホルモンが精神の安定、自己肯定感の向上をもたらしてくれます。
運動はダイエットやマッチョにするためだけのものではなく、心身を整えてくれる最強ツールです。
次回は「ではどのような運動をしたら良いのか?」をテーマにお話しさせていただきます。