令和7年度 ハローワーク業務年報
沖縄県内5安定所 地域別分析レポート
― 那覇・沖縄・名護・宮古・八重山 令和6年度→令和7年度 比較 ―
対象期間:令和7年度(令和7年4月〜令和8年3月) / 数値は全て原数値
沖縄県内5つの公共職業安定所(那覇・沖縄・名護・宮古・八重山)の令和7年度業務年報を、令和6年度と比較しながら地域横断で整理しました。5所の管轄を合わせた労働力人口は611,102人で、うち那覇が52.3%、沖縄が32.1%を占め、両所で県全体の約85%を担っています。名護・宮古・八重山の3所は北部・離島に位置し、規模は小さいものの、労働需給の構造が都市部と大きく異なる点に本レポートの着目点があります。
最も特徴的なのは有効求人倍率の地域間格差です。宮古(1.56倍)・八重山(1.41倍)の離島圏が高い一方、沖縄安定所は0.76倍と5所で唯一1.0倍を割り込み、県平均(0.96倍)も下回りました。求人が求職を上回る離島圏と、求職が求人を上回る沖縄市圏という対照的な労働市場が、同じ県内に併存しています。
就職率にも同じ二極化がみられ、離島圏(宮古52.7%・八重山48.8%)が県都圏(那覇23.4%・沖縄24.4%)の約2倍に達します。求人が豊富で求職者数が限られる離島では、求職者一人あたりのマッチング効率が高い構造がうかがえます。
令和6年度と比べると、5所すべてで新規求人数・就職件数が減少しました。コロナ禍後に積み上がった求人が一巡し、県全体で求人が緩やかに減少へ転じた局面にあります。ただし離島圏では求人が求職を上回る状態が続いており、求人数が減っても人手不足そのものは解消していない点に注意が必要です。
令和7年度における5安定所の主要指標です。労働力人口・完全失業率は令和2年国勢調査に基づく管内数値、その他は業務年報の原数値です。
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指 標 |
那覇 |
沖縄 |
名護 |
宮古 |
八重山 |
|
労働力人口(人) |
319,702 |
195,929 |
45,796 |
25,952 |
23,723 |
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完全失業率(%) |
5.6 |
5.9 |
5.2 |
3.6 |
4.1 |
|
有効求人倍率〔年度平均〕 |
1.03 |
0.76 |
1.10 |
1.56 |
1.41 |
|
新規求人倍率〔年度計〕 |
1.73 |
1.48 |
1.77 |
2.07 |
1.87 |
|
新規求職申込件数(件) |
32,246 |
22,843 |
4,713 |
2,925 |
3,116 |
|
新規求人数(人) |
55,668 |
33,752 |
8,324 |
6,042 |
5,822 |
|
就職件数(件) |
7,545 |
5,566 |
1,720 |
1,542 |
1,520 |
|
就職率〔年度計〕(%) |
23.4 |
24.4 |
36.5 |
52.7 |
48.8 |
|
雇用保険適用事業所数 |
18,105 |
11,359 |
2,372 |
1,701 |
1,873 |
|
雇用保険被保険者数(人) |
263,745 |
136,772 |
25,733 |
12,878 |
13,006 |
(注)赤字は5所中で最も需給がゆるい(求人倍率・就職率が低い)値、緑字は最も引き締まっている値を示します。労働力人口・完全失業率は令和2年国勢調査に基づきます。
主要指標を前年度と並べると、変化の方向がより明確になります。有効求人倍率は宮古(1.47→1.56倍)と那覇(1.02→1.03倍)が改善した一方、沖縄(0.82→0.76倍)と八重山(1.48→1.41倍)は低下しました。就職率は5所すべてで前年度を下回り、とりわけ宮古(60.4→52.7%)の低下幅が大きくなっています。新規求人数・就職件数も全所で減少し、離島圏(宮古・八重山)の就職件数の落ち込みが目立ちます。
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指 標(R6→R7) |
那覇 |
沖縄 |
名護 |
宮古 |
八重山 |
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有効求人倍率〔平均〕 R6 |
1.02 |
0.82 |
1.11 |
1.47 |
1.48 |
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R7 |
1.03 |
0.76 |
1.10 |
1.56 |
1.41 |
|
就職率〔年度計〕(%)R6 |
25.4 |
25.0 |
38.5 |
60.4 |
55.1 |
|
R7 |
23.4 |
24.4 |
36.5 |
52.7 |
48.8 |
|
新規求人数(人) R6 |
59,583 |
36,191 |
8,790 |
6,386 |
6,427 |
|
R7 |
55,668 |
33,752 |
8,324 |
6,042 |
5,822 |
|
就職件数(件) R6 |
7,922 |
5,705 |
1,841 |
1,852 |
1,736 |
|
R7 |
7,545 |
5,566 |
1,720 |
1,542 |
1,520 |
(注)各指標の上段が令和6年度、下段が令和7年度。赤字は前年度から低下、緑字は改善を示します。
有効求人倍率(年度平均)を高い順に並べると、宮古1.56倍、八重山1.41倍、名護1.10倍、那覇1.03倍、沖縄0.76倍です。宮古・八重山は観光関連を中心に恒常的な人手不足にあり、求職者数(宮古942人、八重山1,020人)に対して求人数(宮古1,466人、八重山1,434人)が大きく上回ります。これらの地域に立地する事業では、採用競争力の確保(賃金水準・処遇・募集条件の見直し)と定着支援が経営上の最重要課題となります。
対照的に沖縄安定所(沖縄市を中心とする中部圏)は0.76倍で、求職者10,622人に対し求人8,061人と求職が求人を上回る状態が続いています。県内で最も求職者側の選択肢が限られる地域であり、採用面ではやや有利に働く一方、応募者を活かす受入体制の整備が定着の鍵になります。那覇は1.03倍とほぼ均衡していますが、有効求職者数・有効求人数の絶対量が桁違いに大きく、県全体の需給を左右する中核市場です。
新規求職に対する就職率(年度計)は、宮古52.7%・八重山48.8%・名護36.5%と離島・北部が高く、沖縄24.4%・那覇23.4%と都市部が低くなっています。都市部は求職者の絶対数が多く、就職までの選択肢や検討期間が長い一方、離島は求人の受け皿が限られるぶん求職者と求人の距離が近く、短期間で決まりやすい構造がうかがえます。ただし、就職率の高さが必ずしも労働市場の健全さを意味するわけではない点には注意が必要です。離島では選択肢の乏しさから「就かざるを得ない」就職も含まれ、ミスマッチによる早期離職のリスクと表裏一体である面があります。
新規求人を産業別にみると、都市部(那覇・沖縄)・北部(名護)では医療・福祉が最大の求人業種です。那覇では新規求人55,668人の約34%にあたる19,016人を医療・福祉が占め、高齢化の進行と介護需要の拡大を背景に、県内全域で医療・福祉分野の人材確保が構造的な課題になっています。
一方、離島圏では観光関連(宿泊業・飲食サービス業)の存在感が際立ちます。八重山では宿泊・飲食サービス業(1,372人)が医療・福祉(1,150人)を上回って最大の求人業種となり、うち宿泊業だけで1,120人に達します。宮古でも宿泊・飲食1,345人(うち宿泊業1,251人)が医療・福祉に迫ります。離島経済が観光に強く依存し、季節性・変動性の高い雇用構造を持つことを示しています。
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安定所 |
最大の求人業種 |
同上の新規 求人数 |
上位の求人業種(新規求人数) |
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那覇 |
医療・福祉 |
19,016 |
サービス業6,646/卸売小売4,773/宿泊飲食4,036 |
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沖縄 |
医療・福祉 |
13,196 |
サービス業4,331/建設3,690/宿泊飲食2,153 |
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名護 |
医療・福祉 |
2,593 |
宿泊飲食1,392/建設787/生活娯楽761 |
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宮古 |
医療・福祉 |
1,527 |
宿泊飲食1,345/公務832/サービス業467 |
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八重山 |
宿泊・飲食 |
1,372 |
医療福祉1,150/公務836/卸売小売593 |
この産業構造の違いは、自社の労務管理を考えるうえでも重要です。離島の宿泊・観光事業では繁閑差に対応した変形労働時間制・シフト管理・年次有給休暇の計画的付与が、都市部の医療・福祉事業では夜勤・交代制勤務下の労働時間管理と処遇改善(介護職員等の賃金水準)が、それぞれ重点テーマになります。
雇用保険関係では、5所すべてで育児休業給付と介護休業給付が増加傾向にあります。介護休業給付の受給者数は那覇で前年度比+12.6%、宮古で+142.9%、八重山で+88.9%と大きく伸び、仕事と介護の両立支援が現場で急速に顕在化していることがわかります。育児・介護休業法の改正対応と両立支援制度の整備は、業種や地域を問わず取り組んでおきたい予防的なテーマです。
一方、高年齢雇用継続給付の基本給付は沖縄で前年度比▲32.0%、宮古で▲18.0%と減少しており、同給付の段階的な縮小の影響がうかがえます。60歳以降の処遇を、賃金減額を前提とした給付依存型から、継続雇用者の職務・貢献に応じた賃金制度へと見直していくことが、今後いっそう重要になります。
以上の地域別分析から、立地する地域に応じて優先すべき労務課題は次のように整理できます。都市部(那覇・沖縄)では、多くの求職者を活かした計画的な採用と、医療・福祉を中心とする慢性的な人材不足職種の処遇改善が鍵になります。とりわけ沖縄安定所管内は求職が求人を上回っており、採用面ではやや有利に働くものの、応募者のミスマッチや早期離職を防ぐ受入体制の整備が定着の前提となります。
離島圏(宮古・八重山)では、構造的な人手不足を前提に、賃金・住宅補助などを含む募集条件の競争力強化と、観光の繁閑差に耐える柔軟な勤務制度の設計が中心テーマになります。就職率が高い反面、選択肢の乏しさに起因するミスマッチ離職のリスクが潜むため、採用時のマッチング精度の向上と、入職後の定着支援(オンボーディングや心理的安全性の確保)をあわせて講じることが望まれます。
県全域に共通する課題としては、新規求人数の減少局面への移行、医療・福祉分野の人材確保、そして育児・介護の両立支援ニーズの高まりが挙げられます。これらは法令遵守(育児・介護休業法、労働時間管理)と従業員のウェルビーイングの双方に関わるテーマであり、問題が起きる前に制度を整えておく予防的な取り組みが、持続可能な組織づくりの観点からも有効です。
出典・注記
沖縄労働局/各公共職業安定所「業務年報 令和6年度・令和7年度」(那覇・沖縄・名護・宮古・八重山)。掲載数値は全て原数値。労働力人口・就業者数・完全失業率は令和2年国勢調査に基づきます。就職率=就職件数/新規求職申込件数×100。有効求人倍率〔年度平均〕、新規求人倍率〔年度計〕。