令和7年度 ハローワーク業務年報
医療・福祉業界レポート
― 沖縄県内5安定所 人材確保・需給分析 令和6年度→令和7年度 比較 ―
対象:那覇・沖縄・名護・宮古・八重山 / 新規求人数は原数値
沖縄県内5安定所(那覇・沖縄・名護・宮古・八重山)の令和6年度・令和7年度の業務年報から、医療・福祉分野(日本標準産業分類 大分類P:医療業・保健衛生・社会保険/社会福祉/介護事業)の新規求人を抽出し、2か年で比較しました。5所を合わせた医療・福祉の新規求人は、令和6年度の39,330人から令和7年度は37,482人へと減少しましたが、全産業に占める構成比は33.5%から34.2%へ上昇しています。求人数そのものは減ったものの、県内の求人全体に占める医療・福祉の存在感はむしろ高まっており、この分野の人材確保が地域経済と社会保障の持続性に直結する構造的なテーマであることに変わりはありません。
求人の主軸は医療業ではなく介護・社会福祉分野にあります。令和7年度は5所計で介護・社会福祉24,102人に対し医療業13,162人と、介護・社会福祉が医療業の約1.8倍を占めます。各所とも医療・福祉求人の6〜7割を介護・社会福祉が占め、とりわけ沖縄安定所では71.4%に達します。
令和7年度は医療・福祉求人が5所すべてで前年度を下回りました(▲1.4%〜▲12.0%)。ただしこれは需要の後退ではなく、募集を出しても応募が集まらない/採用枠を絞らざるを得ないという供給の制約と、コロナ禍後に積み上がった高水準の求人の反動が重なったものとみられます。分野の慢性的な人手不足は続いており、求人数の減少をそのまま需給の緩和と受け止めるのは適切ではありません。
医療・福祉の新規求人数と、全求人に占める構成比を2か年で比較しました。求人数は5所すべてで減少しましたが、構成比は那覇・宮古・八重山で上昇しています。全産業の求人が医療・福祉以上に減ったため、相対的な比重が高まった地域があるということです。求人の絶対量では那覇(19,016人)が県内の約半分を担い、沖縄(構成比39.1%)は求人の約4割が医療・福祉で占められています。
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項 目 |
那覇 |
沖縄 |
名護 |
宮古 |
八重山 |
|
医療・福祉 求人数 R6(人) |
19,360 |
14,280 |
2,948 |
1,549 |
1,193 |
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医療・福祉 求人数 R7(人) |
19,016 |
13,196 |
2,593 |
1,527 |
1,150 |
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全求人に占める構成比 R6(%) |
32.5 |
39.5 |
33.5 |
24.3 |
18.6 |
|
全求人に占める構成比 R7(%) |
34.2 |
39.1 |
31.2 |
25.3 |
19.8 |
(注)R6=令和6年度、R7=令和7年度。求人数の赤字は前年度から減少。構成比の緑字は前年度から上昇、赤字は低下。構成比=医療・福祉求人数/全産業求人数×100。
医療・福祉を「医療業(病院・診療所等)」と「介護・社会福祉(介護事業・保育等)」に分けてみると、求人の中心は一貫して介護・社会福祉側にあります。前年度からの動きでは、医療業は那覇で増加(7,370→7,516人)した一方、他の4所では減少しました。介護・社会福祉は那覇・沖縄・名護で減少した一方、宮古(987→1,016人)・八重山(748→761人)の離島圏では増加しています。離島では高齢化の進行に伴う介護需要が、求人を下支えしている構図がうかがえます。
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項 目 |
那覇 |
沖縄 |
名護 |
宮古 |
八重山 |
|
医療業 求人数 R6(人) |
7,370 |
3,920 |
1,132 |
562 |
445 |
|
医療業 求人数 R7(人) |
7,516 |
3,681 |
1,072 |
504 |
389 |
|
介護・社会福祉 求人数 R6(人) |
11,873 |
10,284 |
1,809 |
987 |
748 |
|
介護・社会福祉 求人数 R7(人) |
11,390 |
9,424 |
1,511 |
1,016 |
761 |
|
医療・福祉に占める介護の割合 R7(%) |
59.9 |
71.4 |
58.3 |
66.5 |
66.2 |
(注)緑字は前年度から増加、赤字は減少。大分類Pには保健衛生(分類84)も含むため、医療業+介護・社会福祉は医療・福祉全数と一致しません。割合=介護・社会福祉/医療・福祉全数×100。
医療・福祉はパート求人の比率が高い分野です。令和7年度のパート比率は沖縄37.1%・宮古36.8%を筆頭に、5所とも約3〜4割を占めます。介護・保育の現場が交代制・時間帯限定の勤務を多く抱える実態を反映しています。前年度からの動きで注目されるのは離島圏で、宮古(432→562人、+30.1%)・八重山(290→372人、+28.3%)ではパート求人が大きく増加しました。フルタイム求人が伸び悩むなかでパート求人が拡大しており、正規人材の採用難を、短時間・多様な働き方の活用で補おうとする動きと読めます。
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項 目 |
那覇 |
沖縄 |
名護 |
宮古 |
八重山 |
|
フルタイム求人(一般)R6(人) |
13,368 |
9,093 |
2,005 |
1,117 |
903 |
|
フルタイム求人(一般)R7(人) |
13,278 |
8,295 |
1,818 |
965 |
778 |
|
パート求人 R6(人) |
5,992 |
5,187 |
943 |
432 |
290 |
|
パート求人 R7(人) |
5,738 |
4,901 |
775 |
562 |
372 |
|
パート比率 R7(%) |
30.2 |
37.1 |
29.9 |
36.8 |
32.3 |
(注)緑字は前年度から増加、赤字は減少。フルタイム求人(一般)とパート求人の合計が医療・福祉全数(表1)に一致します。パート比率=パート求人/医療・福祉全数×100。
業務年報の産業別データは求人側のみで、医療・福祉に限った有効求職者数や職種別の有効求人倍率までは把握できません。そのため本レポートの需給評価は、求人の動向と全産業の有効求人倍率を手がかりとした間接的なものである点にご留意ください。そのうえで、県全体の有効求人倍率(年度平均0.96倍)が求職超過ぎみであるにもかかわらず、医療・福祉は各所で最大の求人を出し続けています。これは、この分野が全産業平均とは切り離された強い人材需要を抱えていることを示しています。看護・介護といった専門職は全国的にも有効求人倍率が高水準で推移しており、医療・福祉事業者が置かれた採用環境は、求人数の減少という表面的な数字以上に厳しいとみるのが実務的に妥当です。
第一に、求人の主戦場は介護・社会福祉です。求人数の中心を占め、離島では増加に転じているこの分野では、処遇改善加算の確実な取得と賃金への反映、キャリアパス要件を満たす人事制度の整備が、募集での競争力と定着の双方を左右します。加算を取得していても賃金や等級制度に十分反映できていない事業所は少なくなく、制度を見直す余地が大きい分野です。
第二に、パート求人の比率の高さと離島での急増を踏まえ、短時間正社員・多様な勤務時間制度・シフトの公平な運用を整えることが有効です。フルタイム人材の採用が難しい局面では、育児・介護との両立を望む層を短時間勤務で確実に取り込み、勤務間インターバルや連続勤務の上限といった健康確保措置とあわせて、選ばれる職場づくりを進めたいところです。
第三に、医療・福祉は夜勤・交代制を伴うため、労働時間管理と勤務環境の適正化が離職防止の要になります。宿日直許可、夜勤回数の上限、時間外・休日労働に関する36協定の点検、ハラスメント対策と相談体制の整備を、法令遵守と従業員のウェルビーイングを両立させる予防的な取り組みとして進めておくことが、人材の定着と持続可能な事業運営につながります。
出典・注記
沖縄労働局/各公共職業安定所「業務年報 令和6年度・令和7年度」(那覇・沖縄・名護・宮古・八重山)「5.新規求人の主要産業別状況」。掲載数値は全て原数値。医療・福祉は日本標準産業分類 大分類P(83医療業・84保健衛生・85社会保険/社会福祉/介護事業)。有効求人倍率は全産業ベース(年度平均)。