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沖縄の労働市場の動き【全体版/対話で読む解説版】 令和8年9月分

〜倍率は横ばいなのに「良くなった」とは言えない? 江尾社労士とさくらが読み解く〜

顧問先の経営者向け 解説版出典:沖縄労働局「労働市場の動き」令和8年9月(令和8年10月30日公表)解説:社会保険労務士/医療労務コンサルタント/健康経営エキスパートアドバイザー 江尻事務所

令和8年10月30日、沖縄労働局から「労働市場の動き」令和8年9月分が公表されました。有効求人倍率は1.06倍で前月と同じ水準でしたが、新規求人倍率は1.66倍へと大きく下がりました。この数字をどう読めばよいのか。社会保険労務士の江尾と、事務所スタッフのさくらの対話で、グラフを見ながら分かりやすく解説します。

江尾
江尾社労士
社会保険労務士。統計の数字の裏側を、経営者目線で読み解く。
さくら
スタッフ さくら
事務所スタッフ(27歳)。顧問先様に説明できるよう、江尾社労士に質問しながら学んでいる。
今月のいちばんの注目点

有効求人倍率(季節調整値)は1.06倍で横ばいですが、求人と求職者がほぼ同じ幅で減った結果です。新規求人倍率は1.81倍から1.66倍へ0.15ポイント下がり、直近13か月で最も低い水準になりました。新規求人が減る一方、新たに仕事を探す方は前年同月比で5か月ぶりに増えています。

有効求人倍率(季節調整値)
1.06倍
前月と同水準
新規求人倍率(季節調整値)
1.66倍
前月比 △0.15ポイント
医療・福祉の新規求人数
2,941人
全産業の月間充足数の約2.8倍
求職者に占める45歳以上
53.5%
前月53.3%から上昇

1.有効求人倍率は横ばい。でも「良くなった」わけではない

さくら
スタッフ さくら
江尾先生、9月分の有効求人倍率は1.06倍で、4か月続いた低下が止まったそうですね。顧問先様にも「採用が少し楽になりますか」と聞かれそうです。
江尾
江尾社労士
倍率だけを見ると、そう受け取りたくなりますね。ただ、中身を見ると、有効求人は前月より208人減り、仕事を探している方も233人減っています。分子と分母がほぼ同じだけ減ったので、割り算の答えが変わらなかったのです。
さくら
スタッフ さくら
両方が減って横ばい、ということなのですね。それだと、市場全体は小さくなっていることになりますか。
江尾
江尾社労士
そのとおりです。月間有効求人数は原数値で35か月連続、新規求人数は17か月連続で前年を下回っています。働き手も求人も減る「縮小均衡」の横ばいであって、採用環境が改善したと読むのは早いのです。
指標(季節調整値) 当月値 前月比
有効求人倍率 1.06倍 0.00ポイント
新規求人倍率 1.66倍 △0.15ポイント
月間有効求人数 27,463人 ▲0.8%
月間有効求職者数 25,894人 ▲0.9%
新規求人数 9,407人 ▲5.3%
新規求職申込件数 5,674件 +3.2%

出典:資料1-2(就業地別・季節調整値)。基調判断は「沖縄の雇用情勢は一部で堅調な動きがみられるが、求人の動きに落ち着きがみられる。引き続き物価上昇等が雇用に与える影響に注視する必要がある。」で、前月と同じ表現です。

この章のポイント:有効求人倍率の横ばいは、求人と求職者が同じくらい減った結果です。倍率だけでなく、分子と分母の動きを一緒に見ることが大切です。

2.今月いちばん動いたのは「新規求人倍率」

さくら
スタッフ さくら
今月のいちばんの注目点は、どこになりますか。
江尾
江尾社労士
新規求人倍率です。1.81倍から1.66倍へ、0.15ポイント下がりました。資料に載っている直近13か月で最も低い水準です。新規求人数が前月比▲5.3%と減った一方で、新規求職申込件数は+3.2%と増えました。
さくら
スタッフ さくら
求人が減って、仕事を探し始める方が増えた、ということですね。両方から倍率が下がったのですね。
江尾
江尾社労士
そうなのです。原数値でも、新規求職申込件数は前年同月比+1.8%と5か月ぶりに増えています。新規求人倍率は、これからの採用環境を先取りしやすい指標ですので、今後、有効求人倍率にも下押しの影響が出てくる可能性があります。
沖縄県の有効求人倍率と新規求人倍率の推移(令和7年9月〜令和8年9月・就業地別・季節調整値)

出典:資料1-2(就業地別・季節調整値)。有効求人倍率は7月1.07倍→8月1.06倍→9月1.06倍、新規求人倍率は7月1.77倍→8月1.81倍→9月1.66倍です。

さくら
スタッフ さくら
顧問先様には、どうお伝えすればよいでしょうか。
江尾
江尾社労士
新たに仕事を探し始めた方が増えている今は、その方々を取りこぼさないことが大切だとお伝えください。応募があったらすぐに連絡する、面接の日程を早めに提示するといった、応募への対応と選考のスピードを点検していただくのがよろしいかと存じます。
この章のポイント:新規求人倍率は1.66倍へ急低下。求人の減少と、仕事を探す方の増加が重なった結果です。

3.正社員は「決まりにくい・埋まりにくい」

さくら
スタッフ さくら
雇用形態別では、正社員とパートで違いはありますか。
江尾
江尾社労士
はい、大きく違います。求職者のうち就職できた割合(就職率)は、正社員11.4%に対しパート23.8%。求人のうち採用に至った割合(充足率)は、正社員9.0%に対しパート15.2%です。どちらもパートが上回っています。
■ 正社員■ パートタイム
就職率
11.4%
23.8%
充足率
9.0%
15.2%

出典:資料8-2(正社員・就業地別)、資料9-2(パートタイム・就業地別)。横軸は就職率30%・充足率20%を最大とした相対表示です。

さくら
スタッフ さくら
正社員の充足率が9.0%ということは、10件求人を出しても1件埋まるかどうか、ということですね。
江尾
江尾社労士
そのとおりです。今月は正社員の新規求人が4,092人(前年同月比▲5.0%)と減りましたが、新規求人全体(▲10.3%)より減り方が小さかったため、新規求人に占める正社員の割合は44.9%(前年同月差+2.5ポイント)まで高まりました。求人の中身が正社員寄りになっているのに、埋まる割合は低いままなのです。
この章のポイント:正社員の充足率は9.0%。求人条件の見直しや、選考スピード・情報発信の工夫が、採用の成否を分けます。

4.医療・福祉は「物理的に」人が足りない

さくら
スタッフ さくら
産業別では、やはり医療・福祉が目立ちますか。
江尾
江尾社労士
はい。医療・福祉の新規求人は2,941人(前年同月比+1.9%)でした。これに対して、全産業がひと月に実際に採用できた人数(充足数)は1,056人です。医療・福祉ひとつの分野の募集だけで、全産業の1か月分の採用の約2.8倍あるのです。
■ 医療・福祉の新規求人数■ 全産業の充足数(採用できた数)
医療・福祉 求人
2,941人
全産業 充足数
1,056人

出典:資料4-2(就業地別・産業別・全数)、資料2-2(就業地別・全産業充足数)。

さくら
スタッフ さくら
前月は約3.1倍でしたから、少し縮んだのですね。
江尾
江尾社労士
倍率としては縮みましたが、前年同月と比べると、医療・福祉の求人は+1.9%と増え、全産業の充足数は▲7.4%と減っています。「募集しても埋めきれない」構造は続いていると考えるべきなのです。ほかの産業では、前月に+27.9%と伸びた建設業が今月は▲19.4%と減少に転じ、サービス業(他に分類されないもの)▲30.0%、宿泊業,飲食サービス業▲21.9%も大きく減りました。
順位 産業 新規求人数 前年同月比
1 医療,福祉 2,941人 +1.9%
2 卸売業,小売業 1,048人 +9.2%
3 サービス業(他に分類されないもの) 1,003人 ▲30.0%
4 宿泊業,飲食サービス業 915人 ▲21.9%
5 建設業 633人 ▲19.4%

出典:資料4-2(就業地別・産業別・全数)。

5.求職者の半数以上が45歳以上

さくら
スタッフ さくら
仕事を探している方の年齢は、どうなっていますか。
江尾
江尾社労士
有効求職者25,417人のうち、45歳以上が13,596人で、53.5%を占めます。前月の53.3%から0.2ポイント上がりました。
45歳以上 53.5%
45歳未満 46.5%

出典:資料13(職業別・常用の有効求人・有効求職バランスシート)。13,596÷25,417=53.5%(当所算出)。

さくら
スタッフ さくら
半数以上が45歳以上なのですね。顧問先様が「若い人が来ない」とおっしゃる理由が分かる気がします。
江尾
江尾社労士
採用を「若手が来る前提」だけで組むと、実際の応募層とかみ合わないのです。ミドル・シニア層の経験を活かせる仕事の切り出しや、勤務時間・体力面に配慮した働き方を用意することが、採用力を左右します。

6.企業規模と地域の差

さくら
スタッフ さくら
会社の規模や地域によって、違いはありますか。
江尾
江尾社労士
新規求人の61.3%は29人以下の小規模事業所が出しています。今月増えたのは100〜299人(+1.6%)と300〜499人(+25.7%)の中規模層だけで、99人以下はいずれも▲11%台の減少でした。前月に増えていた500人以上も減少に転じています。
29人以下
 
5,590人/▲11.4%
30〜99人
 
1,867人/▲11.1%
100〜299人
 
1,007人/+1.6%
300〜499人
 
338人/+25.7%
500〜999人
 
132人/▲23.7%
1,000人以上
 
180人/▲42.7%

出典:資料4-2(就業地別・事業所規模別・全数)。棒の長さは29人以下を最大とした相対表示です。

さくら
スタッフ さくら
地域ではどうでしょうか。
江尾
江尾社労士
ハローワーク別の有効求人倍率は、宮古1.96倍が最も高く、沖縄(中部)0.90倍が最も低くなっています。1倍を下回るのは沖縄(中部)だけです。前年からの下がり方が大きいのは八重山△0.17で、同じ離島でも宮古は+0.10と上がっています。
宮古
 
1.96倍/+0.10
八重山
 
1.68倍/△0.17
名護
 
1.37倍/△0.12
那覇
 
1.03倍/△0.11
沖縄(中部)
 
0.90倍/+0.05

出典:本体第4表(ハローワーク別・全数・原数値)。数字は「有効求人倍率/前年同月差」です。

さくら
スタッフ さくら
宮古と八重山で方向が違うのは、覚えておきたいと思います。

7.職種と賃金の差、そして物価

さくら
スタッフ さくら
職種によっても、採用の難しさは違いますか。
江尾
江尾社労士
大きく違います。新規求人倍率は、建築・土木・測量技術者6.38倍、商品販売従事者5.20倍、建設従事者5.05倍などが高く、介護サービス職業従事者も4.60倍と高い水準です。その一方で、一般事務従事者は0.82倍と、求職者のほうが多い状態です。同じ会社の中でも、職種によって打ち手を変える必要があるのです。
さくら
スタッフ さくら
賃金の面で気をつけることはありますか。
江尾
江尾社労士
自動車運転従事者に注意が必要です。フルタイムの求人倍率は3.84倍と人手が足りないのに、求人の平均賃金209,662円が求職者の希望賃金229,048円を19,386円下回っています。前月に続いて、提示額が希望に届いていないのです。ドライバー職を募集する顧問先様には、賃金水準を同業と見比べていただくのがよろしいかと存じます。

出典:資料10(就業地別・職業別・常用)、資料11(就業地別・職業別・常用フルタイム・月給)。新規求職が20件未満の職種は除いています。自動車運転従事者の3.84倍はフルタイム(資料11)の値で、常用全体(資料10)では3.76倍です。

さくら
スタッフ さくら
物価の動きはどうでしょうか。
江尾
江尾社労士
那覇市の消費者物価指数(令和7年=100)は総合102.7で、前年同月比+2.5%でした。5月+1.3%、6月+1.5%、7月+2.1%、8月+2.3%、9月+2.5%と、5か月続けて上昇幅が広がっています。食料が+3.6%と全体を押し上げています。賃金改定や募集賃金を考える際の目安になります。

出典:沖縄県企画部統計課「那覇市及び沖縄県の消費者物価指数の動向」令和8年9月分(表1・表3)。

8.今月のまとめ

さくら
スタッフ さくら
最後に、今月のポイントをまとめていただけますか。
江尾
江尾社労士
有効求人倍率は1.06倍で横ばいでしたが、求人と求職者がともに減った結果で、改善ではありません。今月もっとも大きく動いたのは新規求人倍率で、1.66倍へ下がりました。新たに仕事を探す方は前年同月比で5か月ぶりに増えています。そして、産業のかたより(医療・福祉の求人は全産業充足数の約2.8倍)、求職者の年齢構成(45歳以上が53.5%)、企業規模の二極化(新規求人の61.3%が29人以下)という3つのミスマッチは、今月も続いています。
さくら
スタッフ さくら
顧問先様には、どんな打ち手をお伝えすればよいでしょうか。
江尾
江尾社労士
3つあります。1つ目は、新たな求職者を取りこぼさないよう、応募への対応と選考のスピードを点検すること。2つ目は、ミドル・シニア層を前提とした仕事の設計。3つ目は、物価上昇(那覇市CPI+2.5%)を意識した募集条件の見直しです。どれも、すぐに取りかかれることなのです。
さくら
スタッフ さくら
ありがとうございます。顧問先様にも、数字の中身と一緒にお伝えできそうです。
この解説レポートの監修
社会保険労務士 江尻事務所
社会保険労務士健康経営エキスパートアドバイザー医療労務コンサルタント

社会保険労務士として、労働市場の動きを踏まえた採用計画・賃金設計・就業規則の整備まで、沖縄の中小企業の実情に合わせて伴走支援します。人手不足が続く医療・福祉・介護分野の労務管理や、ミドル・シニア層・多様な働き方を前提とした人事制度づくりも、予防的な観点からお手伝いします。

採用・労務のご相談は、江尻事務所へ

採用計画の見直し、賃金・労働条件の設計、就業規則や多様な働き方の制度づくりなど、本ページに関連するご相談を承っております。江尻までお気軽にご相談ください。

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【出典】沖縄労働局「労働市場の動き」令和8(2026)年9月(令和8年10月30日公表・本体および資料編)、沖縄県企画部統計課「那覇市及び沖縄県の消費者物価指数の動向」令和8年9月分。

【注記】数値は原資料の値をそのまま記載しています(四捨五入していません)。前年同月比・前月比のマイナスは「▲」、前年同月差・前月差(ポイント)のマイナスは「△」で表記しています。構成比・差分・倍率は原典の数値をもとに当所が算出したものです。

本レポートは沖縄労働局ほかの公表資料を基に、社会保険労務士・医療労務コンサルタント・健康経営エキスパートアドバイザーの江尻事務所が解説したものです。

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