令和8年8月28日、沖縄労働局から「労働市場の動き」令和8年7月分が公表されました。県内の有効求人倍率(季節調整値)は1.07倍で、3か月連続の低下となっています。ただし、この倍率の下がり方は「働き手が増えたから」ではなく「求人が減っているから」という点に特徴があります。数字の意味と、中小企業の経営にとって何を示すのかを、分かりやすく整理しました。
情報通信業の新規求人数が前年同月比▲48.0%(▲264人)と、すべての産業のなかで最も大きく減少しました。専門・対人サービス系の求人が細る一方で、医療・福祉や介護は依然として深刻な人手不足が続いています。求人「全体の数」は減っているのに、「採りたい分野では採れない」というミスマッチが、今月もはっきり表れています。
沖縄労働局の基調判断は「沖縄の雇用情勢は一部で堅調な動きがみられるが、求人の動きに落ち着きがみられる。引き続き物価上昇等が雇用に与える影響に注視する必要がある。」で、前月と同じ表現です。主要な6つの指標(季節調整値)は次のとおりです。
| 指標(季節調整値) | 当月値 | 前月比 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率 | 1.07倍 | ▲0.02ポイント |
| 新規求人倍率 | 1.77倍 | ▲0.04ポイント |
| 月間有効求人数 | 27,917人 | ▲2.8% |
| 月間有効求職者数 | 26,135人 | ▲0.8% |
| 新規求人数 | 9,851人 | +4.5% |
| 新規求職申込件数 | 5,561件 | +6.9% |
出典:沖縄労働局「労働市場の動き」令和8年7月・資料1-2(就業地別・季節調整値)。有効求人数が減り続けるなかで倍率が下がっており、需要(求人)側の弱含みが続いていることがうかがえます。
雇用形態別にみると、正社員はパートに比べて「就職(決まる割合)」も「充足(埋まる割合)」も低い状態が続いています。正社員の有効求人倍率0.76倍は、パートの0.86倍を下回っています。募集を出しても正社員のポジションは決まりにくく、企業側も採用に至りにくい構図です。
就職率は正社員10.6%に対しパート28.1%で、差は17.5ポイント。充足率は正社員8.3%に対しパート16.2%で、差は7.9ポイント。いずれもパートが上回ります。前月と比べると両形態とも就職率・充足率が下がっており、紹介・成約そのものが細っている点にも注意が必要です。正社員採用では、求人条件の見直しや、選考スピード・情報発信の工夫が、これまで以上に効いてくる場面です。
出典:資料8-2(正社員・就業地別)、資料9-2(パートタイム・就業地別)。横軸は就職率30%・充足率20%を最大とした相対表示です。
今月、医療・福祉の新規求人は3,054人。これは、全産業がひと月に実際に採用できた人数(充足数1,141人)の約2.7倍にあたります。医療・福祉というひとつの分野の募集だけで、全産業の1か月分の充足を大きく上回っており、「募集しても物理的に埋めきれない」状態が続いています。
新規求人数の多い産業の上位5つは次のとおりです。医療・福祉が突出しており、多くの主要産業が前年割れとなるなか、規模の大きい分野の人手不足が際立ちます。
| 順位 | 産業 | 新規求人数 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 1 | 医療,福祉 | 3,054人 | ▲11.2% |
| 2 | サービス業(他に分類されないもの) | 1,228人 | +9.8% |
| 3 | 宿泊業,飲食サービス業 | 1,071人 | ▲3.2% |
| 4 | 卸売業,小売業 | 930人 | ▲11.8% |
| 5 | 建設業 | 859人 | ▲2.2% |
出典:資料4-2(就業地別・産業別・全数)、資料2-2(就業地別・全産業充足数)。前年同月比で最も減少したのは情報通信業▲48.0%、次いで教育,学習支援業▲29.2%。増加は生活関連サービス業・娯楽業+25.2%、学術研究,専門・技術サービス業+25.0%でした。
仕事を探している方(有効求職者)のうち、45歳以上が53.3%を占めます。前月(53.3%)から横ばいで、50%台前半での高止まりが続いています。採用の設計を「若手が来る前提」だけで組むと、実際の応募層とかみ合いません。ミドル・シニア層の経験を活かせる職務設計や、勤務時間・体力面に配慮した働き方の用意が、採用力に直結します。
出典:資料13(職業別・常用の有効求人・有効求職バランスシート)。有効求職者計25,907人のうち45歳以上13,819人(13,819÷25,907=53.3%)から当所が算出。男女別では女性7,357人が男性6,449人を上回ります。
新規求人を事業所の規模別にみると、29人以下の小規模事業所が全体の62.5%を占めます。一方で前年から増えているのは500人以上の大規模層のみで、中小規模はおおむね前年割れという二極化が続いています。地域の採用競争は、小規模事業所どうしの競り合いが中心になっているといえます。
29人以下の構成比は62.5%、300人以上は7.5%。求人の大半を小規模事業所が担う一方、増えているのは大規模層に限られます。
出典:資料4-2(就業地別・事業所規模別・全数)。棒の長さは各規模の新規求人数(最大=29人以下)を相対表示したものです。構成比は当所が算出(端数処理により合計は約100%)。
有効求人倍率をハローワーク別(原数値)にみると、最も高いのは宮古2.00倍、最も低いのは沖縄(中部)0.86倍で、その差は1.14ポイントです。1倍を下回るのは沖縄(中部)のみ。前年からの下がり方が大きいのは八重山▲0.24、那覇▲0.09で、離島の八重山と中心都市の那覇で弱含みがみられます。同じ離島でも、宮古は2.00倍と高水準を保っており、地域ごとに状況が異なる点にご注意ください。
出典:本体第4表(ハローワーク別・全数・原数値)。数字は「有効求人倍率/前年同月差」。棒の長さは宮古2.00倍を最大とした相対表示です。
物価の上昇は続いています。那覇市の消費者物価指数(令和8年7月)は総合102.3で、前年同月比+2.1%、前月比+0.8%の上昇でした。一方、賃金は実勢を表す「共通事業所ベース」でみると、きまって支給する給与が前年同月比+1.2%(令和8年6月)にとどまります。ここから物価上昇分を差し引いた実質賃金は、試算で約▲0.5%となり、賃金の伸びが物価の上昇に追いついていない状況がうかがえます。
総合指数102.3、前年同月比+2.1%。生鮮食品を除く総合も+2.0%と、上昇基調が続いています。
共通事業所ベースの「きまって支給する給与」は前年同月比+1.2%。実勢の伸びは緩やかです。
賃金+1.2%−物価+1.7%=約▲0.5%(試算値)。物価上昇に賃金が追いつかない状況です。
出典:総務省統計局・沖縄県統計課「那覇市消費者物価指数」令和8年7月分、沖縄県統計課「毎月勤労統計調査地方調査結果」令和8年6月分(規模5人以上・調査産業計)。実質賃金は共通事業所ベースの名目賃金前年比から那覇市CPI(持家の帰属家賃を除く総合・前年比 概ね+1.7%)を差し引いた試算値です。毎勤付表1-1の本系列名目(きまって支給する給与+9.7%)は標本の入替効果を含む非実勢値のため試算には用いていません(付表2-1の本系列実質+7.9%とは性質が異なります)。
有効求人倍率(季節調整値)は1.07倍で、3か月連続の低下となりました。ただしこれは働き手が増えたためではなく、求人(とくに月間有効求人数)が減り続けていることが主因です。今月は情報通信業の求人が前年同月比▲48.0%と大きく落ち込む一方、医療・福祉や介護は依然として深刻な人手不足が続いています。産業のかたより、求職者の年齢構成(45歳以上が53.3%)、企業規模の二極化という3つのミスマッチが今月も継続しました。中小企業の採用では、ミドル・シニア層を前提とした職務設計、物価上昇(那覇市CPI+2.1%)を意識した募集条件の見直し、そしてパートの充足率(16.2%)が正社員(8.3%)を上回る現状を踏まえた雇用形態の設計が、実務上の打ち手として有効です。
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