トップ
こども性暴力防止法
雇用動向調査_医療・福祉
労政審_勤務間インターバル
労政審_目次
沖縄情報_目次
定期健康診断実施結果
カスハラ
労災補償状況
就業規則作成・改定支援
就業規則の読み方・活かし方
同一労働同一賃金
同一労働同一賃金
人事労務ニュース
監督署の監督指導結果
労基法違反・公表事案の傾向
お問合せ
毎月勤労統計調査 分析レポート 対話で読む解説版

毎月勤労統計調査で読む 全国と沖縄の賃金動向【対話で読む解説版】 令和8年7月分

〜「+13.2%」って本当? 江尾社労士とさくらが数字の裏側を読み解く〜

顧問先の経営者向け 解説版出典:毎月勤労統計調査(全国確報・沖縄県地方調査)令和8年7月分、那覇市消費者物価指数解説:社会保険労務士/医療労務コンサルタント/健康経営エキスパートアドバイザー 江尻事務所
社会保険労務士 江尻事務所

このレポートは、厚生労働省「毎月勤労統計調査」(全国・確報)と沖縄県「毎月勤労統計調査地方調査」の令和8年7月分をもとに、賃金を全国と沖縄で比較・分析したものです。沖縄の現金給与総額は前年同月比+13.2%と大きく伸びて見えますが、その数字をどう読めばよいのか。社会保険労務士の江尾と、事務所スタッフのさくらの対話で、グラフを見ながらわかりやすく解説します。

江尾
江尾社労士
社会保険労務士。統計の数字の裏側を、経営者目線で読み解く。
さくら
スタッフ さくら
事務所スタッフ(27歳)。顧問先様に説明できるよう、江尾社労士に質問しながら学んでいる。
今月のいちばんの注目点

見出しの「+13.2%」は見かけの数字で、同じ事業所どうしで比べた実勢の所定内給与は+3.3%と、全国(+3.1%)とほぼ同じ伸びです。物価を差し引いた実質は約+1.0%とプラスに戻りましたが、物価の上昇が強まっており、余裕はまだ小さい状況です。

沖縄 現金給与総額(見かけ)
+13.2%
本系列の前年同月比
沖縄 所定内給与(実勢)
+3.3%
共通事業所ベース
沖縄 実質賃金(試算)
+1.0%
実勢+3.3%−物価+2.3%
所定内給与の水準
83.9
全国=100

1.「+13.2%」って、本当に上がったの?

さくら
スタッフ さくら
江尾先生、沖縄の7月の賃金が前年より13.2%も上がったそうです。全国は4.3%なので、沖縄のほうが3倍も伸びていることになりますね。
江尾
江尾社労士
数字だけを見るとそう見えますね。でも、この13.2%は「本系列」と呼ばれる通常の集計の数字で、そのまま「賃上げが進んだ」とは読めないのです。
さくら
スタッフ さくら
それは、どういうことでしょうか。
江尾
江尾社労士
毎月勤労統計調査は、調べる事業所が定期的に入れ替わります。前年と今年で集計している事業所が違うので、その差も前年比に入り込んでしまうのです。そこで、前年と今年の両方で調べた同じ事業所だけを集計した「共通事業所ベース」という数字も公表されています。こちらが実際の賃金の動き、つまり実勢に近い数字です。
さくら
スタッフ さくら
実勢で見ると、どうなるのでしょうか。
江尾
江尾社労士
沖縄の現金給与総額は+3.9%、毎月の基本的な給与である所定内給与は+3.3%です。全国の所定内給与は+3.1%なので、ほぼ同じ伸びなのです。
図1 所定内給与の前年同月比を、本系列(見かけ)と共通事業所ベース(実勢)で比べたもの

図1 所定内給与の前年同月比を、本系列(見かけ)と共通事業所ベース(実勢)で比べたもの。沖縄は見かけが+7.2%、実勢は+3.3%で、実勢では全国の+3.1%とほぼ同じです。

さくら
スタッフ さくら
見かけと実勢で、こんなに違うのですね。全国のほうは差が小さいように見えます。
江尾
江尾社労士
そうなのです。全国は調べる事業所の数が多いので、入れ替わりの影響が小さくなります。沖縄は事業所が少ないぶん、入れ替わりで平均が大きく動きやすいのです。

2.なぜ沖縄の数字は大きく見えるの?

さくら
スタッフ さくら
入れ替わりのほかにも、理由はあるのでしょうか。
江尾
江尾社労士
あと二つあります。一つはパートタイムで働く人の割合です。沖縄のパート比率は30.6%で、前年から2.2ポイント下がりました。パートの人数は▲6.5%、フルタイムの一般労働者は+3.7%です。給与の低いパートの割合が減ると、一人ひとりの給与が変わらなくても、平均は上がって見えます。
項目 沖縄 全国
パートタイム労働者比率 30.6% 31.35%
同 前年同月差 △2.2ポイント +0.11ポイント
パートタイム労働者数(前年同月比) ▲6.5% +1.2%
一般労働者数(前年同月比) +3.7% +0.8%

※ 出典:沖縄県地方調査 付表6-1・付表11-1、全国確報 第3表。

さくら
スタッフ さくら
もう一つは何ですか。
江尾
江尾社労士
7月は夏のボーナスの月だということです。賞与の額や支払う時期が前年と少しずれるだけで、現金給与総額は大きく動きます。だから、ボーナスの影響を受けない所定内給与と、同じ事業所どうしの実勢で見ることが大切なのです。

3.金額で比べると、全国との差は?

さくら
スタッフ さくら
伸びが全国と同じくらいなら、金額も全国に近いのでしょうか。
江尾
江尾社労士
そこが大事なところです。金額はまだ全国とかなり差があります。所定内給与は沖縄が234,772円、全国が279,911円で、全国を100とすると83.9です。
図2 全国と沖縄の賃金の金額(1人平均月額)

図2 全国と沖縄の賃金の金額(1人平均月額)。所定内給与は全国の83.9、現金給与総額は71.6です。

さくら
スタッフ さくら
現金給与総額だと71.6まで下がっていますね。
江尾
江尾社労士
差がいちばん大きいのはボーナスです。7月の特別に支払われた給与は、全国の133,533円に対して沖縄は59,963円で、全国の44.9しかありません。月々の給与より、賞与の差が大きいのが沖縄の特徴です。
さくら
スタッフ さくら
伸びが同じでも、もとの金額が違えば、差はなかなか縮まらないですね。
江尾
江尾社労士
そのとおりです。同じ率で上がっても、金額の差はむしろ広がります。伸び率と金額は、いつもセットで見てください。

※ 全国比は全国確報値を100として当所が算出しました。沖縄県資料に載っている全国比(現金給与総額71.3等)は全国速報値に基づくため、わずかに異なります。

4.物価を差し引くと、中身はどうなる?

さくら
スタッフ さくら
給与が上がっても、物も値上がりしていますよね。
江尾
江尾社労士
はい。額面の伸びから物価の上昇を差し引いたものが、暮らしの中身の伸び、つまり実質賃金です。実勢の所定内給与+3.3%から、那覇市の物価の上昇2.3%を引くと、沖縄の実質は約+1.0%です。全国は+3.1%から2.2%を引いて約+0.9%です。
図3 実勢ベースで見た名目・物価・実質

図3 実勢ベースで見た名目・物価・実質。7月は沖縄・全国とも、名目の伸びが物価をわずかに上回りました。

さくら
スタッフ さくら
プラスなら、ひと安心ですね。
江尾
江尾社労士
ただ、沖縄は月ごとの振れが大きいのです。1月からの流れを見ると、全国は毎月+1%前後で安定していますが、沖縄は5月が約▲1.1%、6月が約▲0.3%とマイナスでした。7月でようやくプラスに戻ったところです。
図4 実質賃金(試算)の月次推移

図4 実質賃金(試算)の月次推移。全国は安定してプラスですが、沖縄は振れが大きく、5月・6月はマイナスでした。点線の那覇市の物価は、2月の+0.5%を底に上昇が強まっています。

さくら
スタッフ さくら
点線の物価も、だんだん上がってきていますね。
江尾
江尾社労士
そこが気になるところです。那覇市の物価は6月の+1.5%から、7月は+2.3%に上がりました。物価の上昇が続けば、実質はまたマイナスに戻る可能性があります。

※ 実質は「共通事業所ベースの名目の前年同月比 − 持家の帰属家賃を除く総合の物価の前年同月比」による当所の試算です。那覇市の物価は沖縄県公表値(令和7年=100)を用いています。

5.物価の中身をのぞいてみると

さくら
スタッフ さくら
那覇市の物価は、全体(総合)で見ると+2.1%ですよね。それほど高くない気もします。
江尾
江尾社労士
全体の数字だけだと、そう感じますよね。なお、さきほどの+2.3%は、実際にはお金を払わない「持家の帰属家賃」を除いた数字で、実質賃金の計算にはこちらを使っています。でも中身を見ると、食料は+3.8%上がっています。調理食品や肉類は+6.9%、生鮮魚介は+10.4%です。
図5 費目別の物価

図5 費目別の物価。食料や教養娯楽は大きく上がる一方、教育と光熱・水道は下がっており、これが全体の数字を押し下げています。

さくら
スタッフ さくら
教育と光熱・水道はマイナスなのですね。
江尾
江尾社労士
授業料や上下水道料が下がったためです。ただ、その恩恵はすべての家庭に届くわけではありません。毎日の買い物で感じる値上がりは、全体の2.1%より強いと考えておくのがよろしいかと存じます。

※ 出典:沖縄県「那覇市及び沖縄県の消費者物価指数の動向(令和8年7月分)」表-2・表-6・表-7。

6.12月から最低賃金が1,086円に

さくら
スタッフ さくら
最低賃金も上がると聞きました。
江尾
江尾社労士
沖縄の最低賃金は、12月2日から時給1,086円になります。いまの1,023円から63円、約6.2%の引き上げで、過去2番目に大きな上げ幅です。9月25日までに、沖縄労働局が正式に決めました。
令和8年12月2日から 時給1,086円(+63円)

現行1,023円からの引き上げは+約6.2%で、過去2番目の大きさです。国のCランクの目安(+56円)を7円上回りました。

さくら
スタッフ さくら
パートの時給にも影響しそうですね。
江尾
江尾社労士
7月の沖縄のパートの時間当たり給与は平均1,292円で、前年より+2.2%でした。最低賃金の+6.2%は、それを大きく上回ります。平均が1,086円を超えていても、最低賃金に近い時給で働いている方は少なくありません。11月のうちに、全員の時給が1,086円を下回らないか確認しておくことが大切です。

※ 出典:沖縄労働局の決定(令和8年9月25日までに決定、琉球新報ほか報道)。引き上げ率は当所の算出です。

7.会社として、いま何をすればいい?

さくら
スタッフ さくら
最後に、経営者のみなさんは何から始めればよいのでしょうか。
江尾
江尾社労士
まずは12月2日の最低賃金への備えです。パートやアルバイトを含めて、時給が1,086円を下回らないかを点検してください。月給の方も、1時間あたりに直した金額を確認しておくと安心です。
江尾
江尾社労士
そのうえで、見出しの13.2%という数字を、自社の賃上げの目安にしないことです。実勢は+3.3%で全国並みですし、物価も上がり始めています。物価の上昇率を上回る賃金改定を、続けて検討していくことが望まれます。
江尾
江尾社労士
もう一つは賞与です。全国との差は月々の給与より賞与で大きく開いています。業績に応じた賞与や一時金の仕組みを見直すことは、人材の定着にもつながります。
さくら
スタッフ さくら
数字の見方がわかると、顧問先様にもお伝えしやすくなりますね。
江尾
江尾社労士
そうですね。数字は、顧問先のみなさまと一緒に考えるための材料です。賃金を抑える口実にするのではなく、働く方の暮らしと会社の将来の両方を考えるために使っていただければと思います。
今月のポイント

見出しの+13.2%は見かけの数字で、実勢の所定内給与は+3.3%と全国並みです。物価を差し引いた実質は約+1.0%ですが、物価の上昇が強まっており、余裕はまだ小さい状況です。金額では全国の7割から8割台にとどまり、特に賞与の差が大きく開いています。

この解説レポートの監修
社会保険労務士 江尻事務所
健康経営エキスパートアドバイザー医療労務コンサルタント

社会保険労務士として、統計の数字の裏側を読み解き、賃金設計・人事制度・就業規則の整備まで、沖縄の中小企業の実情に合わせて伴走支援します。12月の最低賃金改定に向けた時給体系の見直しも、予防的な観点からお手伝いします。対話に登場する人物は、解説のための設定です。

賃金・人事のご相談は、江尻事務所へ

最低賃金改定への対応、賃金・賞与の設計、人事制度や就業規則の整備など、本ページに関連するご相談を承っております。江尻までお気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら

【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和8(2026)年7月分結果確報」(令和8年9月28日公表)、沖縄県企画部統計課「毎月勤労統計調査地方調査結果」令和8年7月分(令和8年9月30日公表)、沖縄県企画部統計課「那覇市及び沖縄県の消費者物価指数の動向」令和8年7月分(令和8年8月28日公表)。最低賃金は沖縄労働局の決定(令和8年9月25日までに決定、琉球新報ほか報道)。

【注記】いずれも事業所規模5人以上の結果です。数値は原資料の値をそのまま記載しています(四捨五入していません)。前年同月比のマイナスは「▲」、前年同月差のマイナスは「△」で表記しています。全国比・実質賃金は原典の数値をもとに当所が算出(試算)しました。対話形式の本文は、同月の「毎月勤労統計調査で読む 全国と沖縄の賃金動向」の内容を解説用に再構成したものです。

この記事のテーマ・関連キーワード毎月勤労統計調査 沖縄沖縄 賃金 全国比較実質賃金 沖縄共通事業所 実勢 賃金沖縄 最低賃金 1086円那覇市 消費者物価指数賞与 全国比 沖縄中小企業 賃金 沖縄社会保険労務士 沖縄賃金 わかりやすく 解説