トップ
沖縄_労働市場の動き_7月分(全体)
沖縄_労働市場の動き_7月分(医療・福祉)
令和7年 職場における定期健康診断実施結果聞いてみてください。 ホームページ、ホームページ。 沖縄
カスハラ
労災補償状況
就業規則作成・改定支援
就業規則の読み方・活かし方
沖縄情報
同一労働同一賃金
同一労働同一賃金
毎月勤労統計調査(6月分)
退職金制度
人事労務ニュース
その他
お問合せ
 

EQUAL PAY FOR EQUAL WORK

同一労働同一賃金

――正社員と非正規の「待遇差」をどう考えるか

パート・アルバイト・契約社員・嘱託社員と正社員との待遇の違いは、「同じか違うか」ではなく、「その待遇の目的に照らして、違いに理由があるか」で判断されます。本資料は、経営者と人事担当者の双方に向けて、判断の考え方と待遇ごとの目安を整理したものです。

対象:パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者を雇用するすべての企業 / 制度設計・点検の実務担当者・経営層

01Background

1. なぜ今、待遇差の見直しが必要なのか

「パートタイム・有期雇用労働法」第8条は、通常の労働者(正社員など)とパート・有期雇用労働者との間で、待遇ごとにその性質・目的に照らして不合理な差を設けることを禁止しています(均衡待遇)。大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から適用されています。

派遣労働者については、労働者派遣法により、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る「派遣先均等・均衡方式」(第30条の3等)又は一定の要件を満たす「労使協定方式」(第30条の4)により、待遇を決定する仕組みがあります。本資料は主として、通常の労働者とパート・有期雇用労働者との待遇差を対象に解説します。

用語について

本資料では便宜上「正社員」と表記しますが、法律上の比較対象は原則として「通常の労働者」です。自社に複数の正社員区分(地域限定・職務限定・短時間正社員など)がある場合は、雇用区分の名称ではなく、待遇ごとにその目的・性質等を踏まえて、比較対象とすべき通常の労働者を検討します。

この規定は、単に「非正規だから安くてよい」という扱いを認めません。基本給や賞与だけでなく、通勤手当・慶弔休暇・私傷病休暇といった一つひとつの待遇について、正社員と差を設ける場合には、その差が待遇の目的に照らして合理的かを検討する必要があります。合理的に説明できず、不合理な待遇差と評価される場合には、労働局への相談・紛争解決援助等の対象となり得るほか、差額賃金や損害賠償をめぐる労使紛争につながる可能性があります。

近年は最高裁判決も相次いで示されており(後述)、判断の物差しは実務上かなり明確になってきました。ここを整理しておくことが、労使トラブルの予防につながります。

とりわけ沖縄県では、全国と比べてパート・アルバイト・契約社員などの非正規雇用で働く方の割合が高い傾向にあり、毎年の最低賃金の改定が賃金全体に及ぼす影響も大きい地域です。人手の確保が課題となる業種も多く、待遇差の見直しは、法令を守るという意味にとどまらず、地域での人材の確保・定着に直結する経営課題でもあります。なお、不合理かどうかの法的な判断基準そのものは全国共通であり、沖縄であることによって結論が変わるわけではありません。以下の考え方は全国共通のものとして押さえたうえで、自社の採用・定着の課題と結び付けて活用してください。

02Three Steps

2. 判断の土台となる3つのステップ

待遇差が不合理かどうかは、次の順序で考えます。手当の名前や雇用区分の名前ではなく、「その待遇が何のために支給されているか」から出発するのが最大のポイントです。

1

その待遇の「目的・性質」を確かめる

まず、その手当や休暇が何のために設けられているかを特定します。たとえば通勤手当なら「通勤にかかる費用の補填」、慶弔休暇なら「慶弔行事のために仕事から離れる機会の保障」というように、支給の目的をはっきりさせます。

2

目的に照らして「適切な事情」を選び、違いを見る

正社員と非正規の間の違い――@職務の内容(仕事の中身と責任の程度)、A職務の内容・配置の変更の範囲(転勤・異動・配置転換の有無)、Bその他の事情――のうち、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を選んで考慮します。すべてを機械的に比較するのではなく、待遇ごとに関係する事情を見るのがポイントです。

3

目的との関連が乏しい差は不合理と評価されやすい

支給の目的との関連が乏しい事情だけを理由に差を設けている場合、その差は不合理と評価される可能性が高くなります。反対に、待遇の目的に照らして意味のある違い(職務・責任、配置変更の範囲、継続勤務の見込みなど)があれば、その違いに応じた差が許容されることがあります。

03Three Types

3. 判断の結論は3つの類型に分かれる

個々の待遇差は、おおむね次の3つに整理されます。本資料の待遇別解説でも、この目安を付けています。いずれも一律の結論ではなく、制度の目的と個別事情によって変わります。

不合理となるリスクが高い個別確認が必要差が認められる場合がある

「不合理となるリスクが高い」=ガイドライン(同一労働同一賃金ガイドライン)や判例上、雇用区分の違いだけを理由とする差が問題になりやすいもの。「個別確認が必要」=制度の目的、職務、継続雇用、転勤・配置変更などの事情によって結論が分かれるもの。「差が認められる場合がある」=一定の事情の下では差が許容された判例があるが、常に適法というわけではないもの。

04By Treatment

4. 待遇ごとの目安

以下は、法律・ガイドライン・最高裁判例に基づく、待遇ごとの一般的な考え方です。実際の判断は個々の職務内容や制度の実態によって変わりますので、自社にあてはめる際は個別の確認が必要です。

A. 賃金の基本部分

基本給個別確認

考え方:能力・経験、業績・成果、勤続年数など「何に応じて払うか」を明確にし、その要素が同じなら同じ、違いがあればその違いに応じた基本給とします。

注意:更新を重ねて勤務が継続しているのに、賃金制度の目的に照らした根拠なく勤続年数を評価対象から外す、といった目的と切り離れた差は、不合理と評価される可能性があります。基本給は比較の枠組みが複雑で、個別判断性が高い待遇です。

賞与個別確認

考え方:会社業績等への貢献に応じて支給する賞与であれば、貢献に相応する部分について、雇用形態のみを理由に不利に取り扱わないことが求められます。

注意:貢献・職務内容・責任・配置変更の範囲等に実質的な違いがあれば、その違いに応じた差が認められることがあります。「正社員は責任が重い」という抽象的な説明だけでは足りません。

※賞与の不支給が常に違法とは限りません。職務内容等に大きな違いがある事例で不支給が不合理でないとされた例(大阪医科薬科大学事件・最高裁R2.10.13)があります。

B. 役割・成果・勤務に対する手当

役職手当・資格手当リスク高

目的:役職・資格の保有又は活用、これに伴う責任・職務への対価。

原則:非正規であることのみを理由に不支給とするのは問題となり得ます。役職上の責任、資格の使用状況、実際の職務、所定労働時間などに応じた差であれば、手当の目的に照らして合理性が認められることがあります。

特殊勤務手当・作業手当リスク高

目的:特定の作業・勤務の特殊性に対する金銭的評価。

原則:同じ作業・同じ職務なら支給。配置転換の範囲が違っても、行った作業への評価は変わらないとされます。

ハマキョウレックス事件/日本郵便(東京)事件(年末年始勤務手当)

精皆勤手当リスク高

目的:皆勤を奨励する趣旨。

原則:職務内容が同一なら、皆勤を奨励する必要性に違いはなく、非正規への不支給は不合理とされ得ます。

長澤運輸事件

時間外・深夜・休日労働に関する賃金個別確認

目的:時間外・深夜・休日労働に対する補償と、長時間労働の抑制。

原則:法定時間外・深夜・法定休日労働に対しては、雇用形態にかかわらず、労働基準法所定の割増賃金を支払う必要があります。法定を上回る割増率や独自の手当を設けている場合には、その制度目的に照らし、非正規であることのみを理由に不利な取扱いとしていないかを点検します。

C. 生活・実費の補助に関する手当

通勤手当リスク高

目的:通勤にかかる費用の補填。

原則:費用補填という目的は雇用区分で変わらないため、正社員と非正規で支給基準に差を設けるのは原則問題となり得ます。距離・出勤日数などに応じて差を設ける場合は、その差が費用補填という目的に照らして合理的かを確認します。

注意:「近隣採用だから」「勤務が不定期だから」という理由や、支給額に差をつける計算式が費用補填の目的とかみ合っていない場合は、不合理とされやすい待遇です。

ハマキョウレックス事件

食事手当リスク高

目的:勤務時間中の食事の補助。

原則:正社員と同一の支給要件(食事休憩の有無など)で勤務している場合には、同一の支給が求められます。職務や配置変更の範囲の違いは、食事補助の必要性とは直接関係しません。

ハマキョウレックス事件

地域手当・物価手当個別確認

目的:地域の物価差の補償/年齢に応じて増える生活費の補助など。

原則:目的が生活費補助であれば、その必要性は雇用区分で変わらないため、非正規に一切支給しないことが不合理と評価されることがあります。

家族手当・扶養手当個別確認

目的:家族を扶養するための生活費の補助。

原則:更新を重ねて継続勤務している有期雇用労働者と一律に不支給とする場合、手当の目的との関係で不合理と評価されることがあります。他方、長期雇用・人材確保・転勤を伴う人材活用等を含む制度目的が具体的に認められる場合には、差が許容される余地があります。

日本郵便(大阪)事件(最高裁R2.10.15)

住居手当個別確認

目的:住宅費補助なのか、転居を伴う配転可能性のある人材の確保・定着なのか、制度目的の特定が重要です。

原則:正社員に転居を伴う配置変更の可能性があること等が制度目的と実質的に結び付いていれば差が認められる場合がありますが、雇用区分のみを理由とする一律不支給は問題となり得ます。

赴任旅費個別確認

目的:業務上の赴任・転勤に伴う実費の補填。

原則:実際に同様の転居・赴任が生じる労働者について、雇用区分のみを理由に費用補填に差を設けることは問題となり得ます。採用時の任意転居、業務命令による転居、転勤制度に基づく赴任は区別して検討します。

休業手当個別確認

目的:使用者の責に帰すべき事由による休業時の補償。

原則:雇用形態にかかわらず、労働基準法26条により平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。正社員に法定を上回る補償を設けている場合の差の扱いは、補償制度の目的、契約更新・継続雇用の実態等を踏まえ、個別に均衡を検討します。

D. 休暇・休職

私傷病休暇・病気休暇個別確認

目的:私傷病時の生活保障・継続就業の支援。

原則:契約更新を重ねて継続勤務が見込まれる有期雇用労働者に、有給の私傷病休暇を付与しないことが不合理と判断された例があります。他方、就業規則上の「休職」制度は、休職期間・復職判定・契約期間・更新上限等を含む別の論点を伴うため、病気休暇とは区別して検討します。

日本郵便(東京)事件(最高裁R2.10.15)等

夏期・冬期休暇/お盆休暇リスク高

目的:心身の回復のために労働から離れる機会。

原則:恒常的に勤務している非正規にも趣旨は妥当し、特別休暇を与えないのは不合理とされ得ます。所定労働日数・勤務形態に応じて付与日数や取得方法に一定の差を設けることが直ちに不合理となるわけではありませんが、その差が休暇の目的に照らして相当かを確認します。

日本郵便(佐賀)事件(最高裁R2.10.15)

慶弔休暇個別確認

目的:慶弔行事のために仕事から離れる機会の保障。

原則:勤務日数、シフト、当該行事当日の勤務予定、代替休の可否、有給・無給の別、継続勤務の実態等を踏まえて判断します。週の所定労働日数が正社員とほぼ同じ場合に不支給とすることは問題となりやすい一方、シフト振替で対応できる場合は差が認められることもあります。

リフレッシュ休暇個別確認

目的:勤続によらず労働から離れ心身を回復する機会。

原則:恒常的に勤務する非正規にも趣旨が妥当するため、付与しないことが不合理と認められる可能性があります。

子の看護等休暇・介護休暇個別確認

目的:子や家族の世話のための勤務免除。

原則:まず法定の子の看護等休暇・介護休暇の適用除外の可否を確認します。そのうえで、正社員にのみ有給化・取得日数の上乗せ・対象家族の拡大などをしている場合は、上乗せ部分の目的と、非正規との差の合理性を検討します。

05In Okinawa

5. 沖縄の企業にとっての実務上の意義

ここまでの判断基準は全国共通であり、沖縄であることによって法的な結論が変わるわけではありません。そのうえで、沖縄で事業を営む企業にとっては、同一労働同一賃金の整備が特に実務的な意味を持ちます。

沖縄県は、全国と比べてパート・有期雇用などの非正規で働く方の割合が高い傾向にあり、最低賃金の改定が賃金全体に及ぼす影響も大きい地域です。多くの現場で人手の確保が課題となるなか、待遇差を目的に照らして整理しておくことは、「法令を守る」ことを超えて、地域で選ばれ、人材を確保・定着させるための土台になります。逆に、説明のつかない待遇差を放置すると、採用力の低下や早期離職、求人時のミスマッチにつながりかねません。

賃金・手当・休暇の設計を「採用・定着」とつなげる

基本給や賞与、通勤手当や慶弔休暇といった一つひとつの待遇について、「何のために支給するか」を明確にし、正社員と非正規の違いを説明できる状態に整えることは、そのまま「働き続けたい」と思える職場づくりにつながります。手当や休暇は、単なるコストではなく、地域での定着を支える処遇の一部として設計する視点が有効です。

沖縄の事業所で特に確認したい実務ポイント

求人票・募集時の記載:募集の段階から、雇用区分ごとの労働条件と待遇を正確に示し、入社後の実態と食い違わないようにする。
賃金テーブルの整合:正社員・限定正社員・パート・有期など複数の区分がある場合、区分ごとの賃金・手当が目的に照らして整合しているかを一覧で確認する。最低賃金の改定時には、区分をまたいで逆転や不整合が生じていないかを点検する。
処遇改善加算等との整合:介護・保育など加算制度のある業種では、加算の配分ルールと、正社員・非正規の待遇差の説明とが矛盾していないかを確認する。
複数雇用区分の棚卸し:「正規/非正規」の名称ではなく、職務内容・責任・人材活用の仕組みで区分を整理し、待遇ごとに目的・性質等を踏まえて、比較対象とすべき通常の労働者を検討する。

なお、これらはあくまで実務上の重点であり、不合理かどうかの判断基準は全国共通です。個々の待遇差の適否は、第4章までの考え方に沿って、制度の目的と個別事情から判断します。

06Common Pitfalls

6. 特に誤解の多いポイント

「正社員は責任が重いから」だけでは通らない

抽象的に責任の重さを挙げるだけでは足りません。その手当の目的に、責任の違いが実際に関係しているかが問われます。関係しない待遇(通勤手当・慶弔休暇など)では、この説明は理由になりません。

「本人が採用時に同意していた」は理由にならない

通勤手当の上限などを採用時に説明し本人が納得していたとしても、それだけでは不合理な待遇差を正当化する「その他の事情」とは認められません。

定年後再雇用でも、当然には差を正当化できない

定年後再雇用(嘱託)であることは「その他の事情」として考慮され得ますが、それだけであらゆる待遇差が許されるわけではありません。手当ごとに目的に照らした判断が必要です(長澤運輸事件)。

計算式が支給目的とかみ合っているか

通勤手当を「費用補填」としながら勤務時間数を係数に含める、といった計算式は、目的と矛盾し不合理とされやすいものです。手当の目的と計算方法の整合を点検してください。

07Duty to Explain

7. 「説明できる状態」にしておくこと(説明義務)

パート・有期雇用労働法第14条2項により、事業主は、パート・有期雇用労働者から求められたときは、正社員との待遇差の内容とその理由を説明しなければなりません。待遇ごとに「なぜこの差があるのか」を言葉で説明できるよう、支給の目的と基準を就業規則・給与規程に整理しておくことが、実務上の備えになります。

08Self-Check

8. 自社点検の観点

まずは次の観点で、自社の制度を棚卸ししてみてください。

正社員に支給していて非正規に支給していない手当・休暇を、すべて洗い出しているか。
それぞれの手当・休暇について、「何のために支給しているか(目的)」を言葉で説明できるか。
その目的に照らして、正社員と非正規の違い(職務内容・変更範囲・その他の事情)が本当に関係しているか。
差の理由が「非正規だから」「慣行だから」「本人が同意したから」になっていないか。
手当の支給目的と計算式・支給基準がかみ合っているか。
「正規/非正規」の名称ではなく、実態(職務内容・人材活用の仕組み)で比較しているか。複数の正社員区分がある場合は、待遇ごとに目的・性質等を踏まえて、比較対象とすべき通常の労働者を検討しているか。
待遇差の内容と理由を、求められたときに説明できるよう規程に整理してあるか。

本資料の位置づけ・ご注意

ここでの目安は一般的な考え方であり、個別の法的判断を保証するものではありません。実際には、職務内容・配置変更の範囲・勤務の実態によって結論が変わります。また、本資料で挙げた判例の多くは旧労働契約法20条の下での事案ですが、現行のパート・有期雇用労働法第8条の解釈・実務においても重要な判断材料となります。いずれも制度・事案ごとに個別に判断されますので、自社の制度を具体的にあてはめた点検・規程の見直しについては、当事務所が個別にお手伝いします。

Contact

制度の点検や規程の見直しは、
江尻までお気軽にご相談ください。

就業規則の改定、賃金・人事制度の設計から、待遇差の説明資料づくりまで。
まずは、いまの困りごとをお聞かせください。

まずは気軽に相談する
TEL098-988-3071MAILejiri@e-jimusho.jp

お問い合わせフォーム:https://www.e-jimusho.jp/contact.html

社会保険労務士健康経営エキスパートアドバイザー医療労務コンサルタント
社会保険労務士 江尻事務所同一労働同一賃金 / OKINAWA

本資料は制度理解のための一般的な解説であり、個別の法的判断を保証するものではありません。