就業規則の読み方・活かし方 パートタイム社員編D
第5章 服務
今回取り上げる労務問題
「LINEで連絡したのに、なぜ届出していないことになるのですか?」──欠勤届出の方法をめぐるトラブル
「勤務時間外のことは自由でしょう?」──届出なき副業・兼業が発覚したケース
「ちょっと写真を載せただけなのに……」──SNS投稿による機密情報の漏えい
はじめに
「うちのパートさん、今朝LINEで『休みます』って送ってきたのですけど、これってダメなのですか?」──人事部にこんな問い合わせが入ったことはないでしょうか。あるいは、「パートさんが夜、別の店でも働いているらしい」「SNSに職場の写真を投稿していた」──こうした話を耳にして、対応に迷った経験をお持ちの方もいるかもしれません。
第5章「服務」は、パート社員が日々の勤務で守るべきルールを定めた章です。出退勤の記録、欠勤届出、副業・兼業、情報管理、ハラスメント防止──条文は多岐にわたりますが、いずれも「職場の秩序を守りながら、安心して働ける環境をつくる」という共通の目的に向けて整備されています。総務省の「令和4年就業構造基本調査」によれば、副業をしている人は約305万人にのぼり、就業形態を問わず副業・兼業の管理は重要性を増しています。
服務規定の特徴は、第1章の総則や第4章の労働時間のように「会社が従業員に何を保障するか」を定めた規定とは異なり、「従業員が会社に対して何を守るべきか」という義務の側面が中心となっている点です。もちろん、義務だけではありません。ハラスメント防止や内部通報のように、パート社員自身を守るための仕組みも含まれています。しかし、服務規定は全体として「信頼関係の土台となる行動規範」という性格を持っていることを、まず押さえておきましょう。
今回は、株式会社あっぱれ商事の人事部総務課で働く画猫さんが、顧問の江尾社労士のもとを訪れました。3つのトラブルを通じて、服務規定の読み方と活かし方を学んでいきましょう。
登場人物
江尾社労士:社会保険労務士として20年以上のキャリアを持つベテラン。
画猫さん:株式会社あっぱれ商事の人事部総務課に所属して3年目。
トラブル1:「LINEで連絡したのに、なぜ届出していないことになるのですか?」──欠勤届出の方法をめぐるトラブル
四月の沖縄は、すでに半袖で過ごせるほどの陽気に包まれている。県内各地ではシーミー(清明祭)の準備が進み、先祖のお墓の前に家族が集まってごちそうを囲む光景はこの時期ならではの風物詩だ。シーミーは本土の「お墓参り」とはだいぶ趣が異なり、親族が重箱料理を広げて賑やかに過ごすのが沖縄流。先祖を敬う気持ちは同じでも、その表現のしかたは土地によって違う──就業規則も同じで、同じ目的のルールであっても、会社ごとに表現が異なるものだ。ところが、あっぱれ商事の人事部では、穏やかな春とは裏腹に少し困った相談が持ち込まれていた。
画猫さん:「先生、パート社員のAさんのことでご相談です。先週の月曜日、Aさんが始業時刻を過ぎても出勤しませんでした。上司のところにはLINEで『体調不良でお休みします』とメッセージが届いており、上司は『了解』スタンプを返しています。ところが正式な欠勤届が出ておらず、Aさんに伝えたところ『LINEで連絡しましたよね? 上司もOKと言ってくれたじゃないですか。なぜ届出していないことになるのですか?』と不満顔で……」
江尾社労士:「よくあるケースです。我が社のパートタイム社員就業規則の第21条を確認しましょう。『パート社員が、欠勤、遅刻、早退および私用外出をするときは、事前に届け出なければならない。ただし、やむを得ない事由により事前に届け出ることができない場合は、原則として本人が直接、電話(SNSやメールなどは不可)にて会社(上長)へ連絡し、届け出を出勤した日に行うものとする』。ポイントは、事前届出が原則であること、そして当日やむを得ず連絡する場合の手段が電話に限定されていることの2点です」
画猫さん:「LINEはSNSだから不可ということですね。でも上司が『了解』スタンプを返しています。これで会社が認めたことにはなりませんか?」
江尾社労士:「上司のスタンプは状況を把握した意思表示にすぎず、就業規則上の届出手続きが完了したことにはなりません。むしろ上司側にも課題があります。LINEを受けた時点で『就業規則では電話連絡が必要ですので、体調が落ち着いたら一度電話をください』と案内すべきでした」
画猫さん:「そもそもなぜLINEではダメなのでしょうか。今の時代、電話よりLINEのほうが手軽で確実だという声もあると思うのですが」
江尾社労士:「電話を原則とする理由はいくつかあります。まず、双方向のやり取りで本人の声色や状態をある程度把握できること。次に、本人が直接かけることで『なりすまし』を防止できること。そして、グループLINEなど複数人への一斉送信では、誰が責任を持って受け取ったのかが曖昧になりやすいことです。もちろん、会社として将来的にチャットツールを正式な連絡手段として認めること自体は、就業規則を改定すれば可能です。ただしその際は、既読確認をもって受理とするのか、グループではなく個別の連絡に限るのかなど、運用ルールの整備が欠かせません」
画猫さん:「もしAさんが今後もLINEだけで連絡し続けた場合、懲戒の対象になりますか?」
江尾社労士:「一度説明した上でなお繰り返すのであれば、第30条第1号@の『会社が認める正当な理由なく、欠勤、遅刻などの不就労を重ねたとき』や、同号Cの『就業規則その他会社が定めた規則に抵触した行為があったとき』に該当し得ます。ただし、懲戒処分に至る前に、なぜ電話が困難なのかを丁寧に聞き取ることも重要です。たとえば、聴覚に障害がある方や、電話に強い不安を感じる方がいる可能性もあります。そうした事情がある場合は、代替手段を個別に検討するなど、合理的な配慮も必要になります」
画猫さん:「第22条の服務心得にも関連する規定がありますよね。第1号@に『常に心身の健康に留意し、体調不良による能率低下を起こさないようにすること』、第6号@には『速やかに会社へ届け出なければならない』と、届出義務が繰り返し書かれています」
江尾社労士:「よく読んでいますね。服務規定は個別のルールの寄せ集めではなく、全体として“職場秩序の維持”という1つの目的に向かっています。欠勤の届出もその一環です。ちなみに第20条にも注目してください。『パート社員は、始業時刻、終業時刻、休憩時間を厳守し、所定の方法に従って、出退勤の時刻を自らが正確に記録しなければならない』。ここでの『自らが正確に記録する』という文言は、出退勤の代理打刻の禁止も意味しています」
画猫さん:「代理打刻は第22条第2号Fの『労働時間に関する記録の不正』にも該当しますよね」
江尾社労士:「そのとおりです。同僚に頼んでタイムカードを打刻してもらった場合、頼んだ側も頼まれた側も服務規律違反になり得ますし、悪質な場合は第30条の懲戒事由にも該当します。Aさんへの対応としては、第21条の手続きを改めて説明し、今後は電話連絡を案内してください。その際、『LINEで連絡してくださったこと自体はありがたい。ただ就業規則では電話が求められていますので、今後はまず電話をお願いします』と、認めるべき部分は認めた上で伝えるのがよいでしょう。同時に上司にも正しい対応フローを共有してください」
画猫さん:「上司向けのフローとしては、どのようなものを整備すればよいでしょうか」
江尾社労士:「LINEやメールで欠勤連絡を受けた場合の対応フローチャートを作成するとよいでしょう。たとえば、@LINEで連絡が来たら、まず『電話をかけ直してください』と返信する。A本人から電話があったら、体調の状況を確認し、復帰見込みも聞いておく。B通話の内容を所定の欠勤連絡シートに記録する。C出勤日に本人から正式な欠勤届を提出してもらう──この4つのステップを紙1枚にまとめて、管理職に配布してください。ルールが明確になれば、上司もパート社員も迷わずに済みます」
画猫さん:「今回のようなトラブルを未然に防ぐには、入社時のオリエンテーションが鍵になりそうですね」
江尾社労士:「そのとおりです。入社時に第20条と第21条を口頭で説明し、『欠勤・遅刻の連絡は電話で、出退勤の記録は自分自身で』という2つの原則を伝えるだけでも、今回のようなトラブルはかなり減らせます。説明の際には、なぜそのルールがあるのか──電話は本人確認と状態把握のため、自己記録は労働時間の正確な管理のため──と理由をセットで伝えると、パート社員も納得感を持って受け入れやすくなります」
トラブル2:「勤務時間外のことは自由でしょう?」──届出なき副業・兼業が発覚したケース
画猫さん:「先生、2つ目のご相談です。パート社員のBさんが、当社で9時から14時まで勤務した後、近所のコンビニエンスストアで16時から21時まで働いていることが同僚の報告でわかりました。本人に確認すると、『勤務時間外に何をしようと自由でしょう? 届出なんて必要なのですか? パートなのに副業を制限されるのはおかしくないですか?』と言われました」
江尾社労士:「Bさんの疑問はもっともな部分もありますが、就業規則にルールが定められています。第22条第7号を見てみましょう。『パート社員は、原則として、労働時間外または休日に副業・兼業を行うことができるが、この場合は事前に会社に届け出なければならない』。副業そのものは原則として認められています。ただし事前届出が条件です」
画猫さん:「Bさんは『パートなのに』と言っていましたが、雇用形態に関係なく届出が必要ということですよね」
江尾社労士:「そうです。パート社員であっても、あっぱれ商事との労働契約が成立している以上、就業規則の服務規定に従う義務があります。これは法律で禁止されているのではなく、我が社の就業規則で定めた契約上の義務です。副業を完全に禁止しているのではなく届出制にしている点がポイントです」
画猫さん:「第22条第7号の後段には、健康や労務提供、機密保持に支障がある場合は制限できるともありますね。Bさんの場合、コンビニですから競業や機密漏洩のリスクは低いですが、当社5時間+コンビニ5時間で1日10時間。健康面が心配です」
江尾社労士:「大事な視点です。厚生労働省の『副業・兼業の促進に関するガイドライン』でも、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に自由としつつ、労務提供上の支障がある場合や競業の場合などは制限できるとしています。さらに労働基準法第38条第1項は、事業場が異なっても労働時間を通算すると定めています。Bさんの場合、合計10時間は法定の8時間を超えますから、後から労働契約を締結した事業主に割増賃金の支払い義務が生じる可能性があります」
画猫さん:「あっぱれ商事としてはどのような対応を取ればよいでしょうか」
江尾社労士:「まず、Bさんに第22条第7号を丁寧に説明し、副業・兼業の届出書を提出してもらうことです。『知らなかった』という場合は、周知が不十分だった可能性がありますから、いきなり懲戒処分にはなりません。届出を受けた後、第22条第1号@の『常に心身の健康に留意し、体調不良による能率低下を起こさないようにすること』の観点から、Bさんの労働時間の合計、睡眠時間、通勤時間なども含めた生活全体を確認してください。健康面に支障がなければ認める方向でよいでしょう」
画猫さん:「届出の際に確認すべき項目は何ですか?」
江尾社労士:「副業先の事業の内容、業務の種類、勤務日数と時間帯──これらは最低限把握する必要があります。特に労働時間の通算が必要な場合は、あっぱれ商事側で時間外労働の管理に影響しますから、正確な情報が欠かせません。また、競業に該当しないか、機密保持に支障がないかも確認してください。Bさんのケースではコンビニ勤務ですから問題ありませんが、たとえば同業他社のパートであれば、より慎重な判断が求められます」
画猫さん:「会社全体として整備すべきこともありそうですね」
江尾社労士:「はい。1つは副業・兼業の届出書の書式整備です。副業先の名称、業務内容、勤務時間帯、勤務日数を記載できるようにしておくと審査がしやすくなります。もう1つは、パート社員全体への制度周知です。Bさんが『知らなかった』のであれば、他にも同じ状況のパート社員がいるかもしれません。入社時の説明資料や就業規則説明会で、『副業を禁止しているのではなく、お互いの安全と健康のために届出をお願いしている』という趣旨を伝えてください」
画猫さん:「副業・兼業は“禁止”ではなく“届出制”。このニュアンスを正確に伝えることが、パート社員との信頼関係を守ることにつながるわけですね」
江尾社労士:「そのとおりです。そしてもう一点。副業・兼業を届け出てもらった後の管理も大切です。副業先での勤務状況に変化があった場合──たとえば勤務日数が増えた、業務内容が変わった──には、改めて届け出てもらう仕組みにしておくと安心です。第22条第7号は初回の届出だけでなく、変更時の届出も想定していると読めますので、届出書に『変更があった場合は速やかに届け出ること』という一文を入れておくとよいでしょう」
トラブル3:「ちょっと写真を載せただけなのに……」──SNS投稿による機密情報の漏えい
画猫さん:「先生、3つ目です。パート社員のCさんが、自分のSNSに『今日も頑張ってます!』と職場のデスク周辺の写真を投稿していました。写真にはパソコン画面に表示された取引先の発注書が写り込んでおり、会社名と発注金額が読み取れる状態でした。Cさんに悪気はなく、『ちょっと写真を載せただけなのに、なぜそんな大事になるのですか?』と驚いています」
江尾社労士:「悪意がなくても情報漏えいは重大な問題です。関連する条文を整理しましょう。第22条第8号@には『業務上で知り得た業務に関する情報の保護には万全を期し、一切外部へ情報を漏えいしてはならない』、同号Bには『ブログやSNSなどで、会社や他者の信用失墜を招く情報を公開してはならない。会社が求めたときには速やかに削除しなければならない』、同号Eには『会社の許可なく、個人所有の端末に業務関連情報(写真、映像含む)を保有してはならない』とあります。さらに第3号@の私用端末の業務時間中使用禁止にも触れ得ます」
画猫さん:「条文を並べると、Cさんの行為は複数の服務規律に抵触していることがわかりますね。私用スマートフォンの使用、業務情報の写真保有、そしてSNSでの情報漏えい──3つの問題が重なっている」
江尾社労士:「そのとおりです。最優先は被害の拡大防止です。第22条第8号Bに基づき、直ちにCさんに投稿の削除を指示してください。次に拡散状況の確認──スクリーンショットが第三者に保存されていないかも可能な範囲で調べます。そして取引先に対して経緯を報告し、お詫びすることが必要です」
画猫さん:「取引先への報告は、どの程度の内容を伝えるべきですか?」
江尾社労士:「『弊社従業員のSNS投稿により、貴社の発注書の一部が外部に閲覧可能な状態になっていた事実が判明しました。投稿は速やかに削除済みです。原因と再発防止策は改めてご報告いたします』──このように、事実の概要、対応状況、今後の方針を簡潔に伝えるのが基本です。対面での説明が望ましく、書面での報告と併用してください。ここで大事なのは、社内調査が完了する前に『処分しました』と伝えないこと。取引先が求めているのは“事実と再発防止”であって、“犯人探し”ではありません」
画猫さん:「個人情報保護法との関係はどうなりますか?」
江尾社労士:「発注書に取引先の担当者名が含まれていれば個人情報に該当し得ますし、個人情報に当たらなくても取引先の営業上の秘密が漏れたこと自体が問題です。個人情報保護委員会のガイドラインでも従業者の監督・教育の重要性が繰り返し指摘されています。ここで大切なのは、法律(個人情報保護法など)は国と個人の関係・罰則を規律するもので、我が社の就業規則は会社と従業員の契約上の義務を定めたもの──この2つは別の仕組みですが、法律の趣旨を理解しておくことで、なぜ就業規則にこのルールがあるのかをわかりやすく説明できるようになります」
画猫さん:「Cさんへの処分はどうなりますか?」
江尾社労士:「第28条の懲戒規定に基づき、第30条第1号Cの『就業規則その他会社が定めた規則に抵触した行為があったとき』に該当し得ます。ただし、本人に悪意がなかったこと、初めての違反であること、情報の拡散の程度なども総合的に考慮する必要があります。まず口頭で注意した上で始末書を求め、それでも改善が見られなければ戒告という段階を踏むのが実務上は妥当でしょう」
画猫さん:「再発防止策としては何が必要ですか?」
江尾社労士:「3つ提案します。まず、SNS利用に関する具体的なガイドラインの策定です。第22条第8号BにはSNSの規定がありますが、具体的に『何をしてはいけないのか』のイメージを持てるよう、禁止行為の具体例をまとめて全従業員に配布してください」
画猫さん:「具体例というのは、たとえばどんな内容ですか?」
江尾社労士:「たとえば、『職場の写真を撮影・投稿しない』『業務に関する情報(数字、取引先名、社内会議の内容など)をSNSに書き込まない』『制服やネームプレートが写った写真を投稿しない』といった項目です。“やってはいけないこと”を箇条書きにするだけでなく、実際に起きた事例を匿名化して紹介すると理解が深まります。Cさんのケースも、本人の了承を得た上で、今後の研修資料に活かせるかもしれません」
画猫さん:「なるほど。2つ目と3つ目は何ですか?」
江尾社労士:「2つ目は情報管理研修の実施です。第26条は会社がパート社員に対し必要な教育を行うことができると定めていますので、その一環として位置づけます。パート社員は入社時の研修が短時間で済まされがちで、情報管理の教育が不十分なケースが少なくありません。年に1回でも、情報管理に特化した研修を30分程度行うだけで効果があります。そして3つ目は、クリアデスク・クリアスクリーンの徹底です。写真に情報が写り込むリスクを減らすには、そもそもデスク上やパソコン画面に機密情報を放置しないこと。仕組みで防ぐという発想が大切です」
画猫さん:「仕組みで防ぐ──Cさんのような悪意のないケースほど、本人の注意だけに頼るのでは限界がありますものね」
江尾社労士:「そうです。第22条の冒頭には『パート社員は、誠実に勤務し、かつ次の事項を遵守しなければならない』とあります。これは義務の規定ですが、同時に会社には安全で働きやすい環境を整える責任がある。権利と義務はセットです。会社が情報管理の仕組みを整え、教育を行い、パート社員もそのルールを理解し守る──服務規定はこの双方向の信頼関係を支えるための約束事なのです」
画猫さん:「ちなみに、Cさんが退職した後も情報漏えいのリスクは残りますよね」
江尾社労士:「よい指摘です。第22条第8号Aには『在職中または退職後においても、会社ならびに取引先などの機密、個人情報を開示、漏えい、提供をしてはならない』と明記されています。退職後の機密保持義務は就業規則で定めておくことが重要で、あっぱれ商事の就業規則にはきちんと盛り込まれています。退職時には第38条に基づき、業務に関する情報を会社の指示に従って破棄または返還させ、退職後の情報保持を禁止することも忘れないでください」
おわりに
画猫さん:「今日のお話を振り返ると、服務規定は“縛りつけるためのルール”ではなく、“お互いが安心して働くための約束事”なのだということがよくわかりました。欠勤の届出方法、副業の届出制度、情報管理──どれも、パート社員を信頼しているからこそ最低限のルールを決めておく。その姿勢が大切なのですね」
江尾社労士:「そのとおりです。服務規定の条文の背景には、過去に実際に起きたトラブルの教訓が詰まっています。『なぜこのルールがあるのか』を理解していれば、形式的な遵守ではなく本質的な行動につながります」
画猫さん:「今日出てきた3つのトラブルに共通していたのは、パート社員が『知らなかった』『悪気はなかった』というケースばかりだったことです。ルール違反の多くは、悪意ではなく無知から生じるのかもしれません」
江尾社労士:「鋭い気づきですね。だからこそ、就業規則の周知が何より大切なのです。画猫さんが現場でパート社員に就業規則を説明する際も、条文を読み上げるだけでなく、『このルールはこういう場面で皆さんを守るためにあります』と背景を添えてください。条文の意味がわかれば、パート社員自身が判断に迷ったときに正しい行動を選べるようになります。服務規定は6つの条文で構成されていますが、今回取り上げた出退勤(第20条・第21条)、服務心得(第22条)のほかにも、ハラスメント防止(第23条)、所持品検査(第24条)、内部通報(第25条)と、職場環境を守るための規定が並んでいます。これらもぜひ一度通読してみてください。次回は第6章『教育』を取り上げましょう。パート社員の教育訓練と同一労働同一賃金の関係など、これからの時代に欠かせないテーマです」
参照条文一覧
社会保険労務士 江尻育弘