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毎月勤労統計調査 分析レポート

毎月勤労統計調査で読む 全国と沖縄の賃金動向【医療・福祉版】 令和8年7月分

〜報酬改定の賃上げは、沖縄の医療・福祉に届いているか〜

医療法人・社会福祉法人の経営者向け 解説版出典:毎月勤労統計調査(全国確報・沖縄県地方調査)令和8年7月分ほか解説:社会保険労務士/医療労務コンサルタント/健康経営エキスパートアドバイザー 江尻事務所
社会保険労務士 江尻事務所

このレポートは、厚生労働省「毎月勤労統計調査」(全国・確報)と沖縄県「毎月勤労統計調査地方調査」の令和8年7月分をもとに、医療・福祉の賃金を全国と沖縄で比較・分析したものです。令和8年6月から、診療報酬改定と介護報酬の期中改定(処遇改善加算の拡充)が施行され、医療・福祉の職場では賃上げへの対応が進められています。その効果が統計にどう表れているかを、7月分の毎月勤労統計調査で確認しました。全国では、同じ事業所どうしで比べた実勢(共通事業所ベース)の医療・福祉の所定内給与が6月・7月と伸びを高めています。一方、沖縄の医療・福祉は前年同月比▲4.6%と大きく下がって見えますが、これは調査対象事業所の入れ替わりや働く人の構成変化を含む「見かけ」の数字です。このレポートでは、見かけの数字と実勢を切り分け、全国と沖縄の医療・福祉の賃金を同じ土俵で比べています。

今月のいちばんの注目点

全国の医療・福祉の所定内給与は、実勢(共通事業所ベース)で前年同月比+2.8%でした。令和7年は+1%前後にとどまっていましたが、報酬改定が施行された6月から+2.7%、7月+2.8%と伸びを高めています。ただし物価上昇(+2.2%)を差し引いた実質は約+0.6%と小幅で、全産業(+3.1%)にはなお届いていません。沖縄の医療・福祉は本系列で▲4.6%ですが、パートタイム労働者数が▲9.9%と大きく動いており、見かけの数字と考えられます。沖縄の所定内給与の水準は全国の91.5で、全産業(83.9)よりも全国との差が小さいのが特徴です。

沖縄 医療・福祉 所定内給与
242,188円
全国264,774円の91.5(全産業は83.9)
沖縄 医療・福祉(見かけ)
▲4.6%
本系列の前年同月比。構成変化を含む
全国 医療・福祉(実勢)
+2.8%
共通事業所ベースの所定内給与
全国 医療・福祉 実質(試算)
+0.6%
実勢+2.8%−物価+2.2%

1.このレポートでわかること

第一に、沖縄の医療・福祉の賃金水準が全国と比べてどの位置にあるかです。月々の給与は全国の9割を超え、全産業よりも全国との差が小さい一方、賞与の差は大きく開いています。第二に、沖縄の医療・福祉の前年同月比▲4.6%という数字をどう読むかです。第三に、全国の医療・福祉では、令和8年6月施行の報酬改定のあとに実勢の賃金の伸びが高まっているという事実です。第四に、12月2日に発効する最低賃金の引き上げ(時給1,086円)との関係です。第五に、これらを踏まえて医療法人・社会福祉法人の経営者が今どう構えるべきかです。数字は顧問先のみなさまと一緒に考えるための材料であり、賃金を抑える口実ではありません。

2.沖縄の医療・福祉の賃金水準

令和8年7月の沖縄の医療・福祉(規模5人以上)の所定内給与は242,188円で、全国の264,774円に対し全国比91.5でした。沖縄の全産業の所定内給与は全国の83.9ですので、医療・福祉は全産業よりも全国との差が小さい分野です。診療報酬や介護報酬といった全国一律の公定価格のもとで運営されていることが、背景の一つと考えられます。沖縄県内で比べても、医療・福祉の所定内給与は全産業(234,772円)を上回っています。

指標(1人平均月額) 全国 沖縄 全国比
現金給与総額 360,912円 289,743円 80.3
きまって支給する給与 279,245円 259,013円 92.8
所定内給与 264,774円 242,188円 91.5
特別に支払われた給与 81,667円 30,730円 37.6
一般労働者の所定内給与 330,297円 281,345円 85.2
パートタイム労働者の所定内給与 135,959円 109,344円 80.4

※ 出典:沖縄県地方調査 付表1-1・付表7-1、全国確報 第1表(いずれも医療,福祉・規模5人以上・本系列)。全国比は全国=100としたときの沖縄の水準で、当所が算出しました。

図1  医療・福祉の賃金水準の比較

図1 医療・福祉の賃金水準の比較。きまって支給する給与は全国の92.8、所定内給与は91.5と、月々の給与は全国の9割を超えます。一方、賞与を含む現金給与総額は80.3まで差が広がります。

差が大きいのは賞与です。7月の特別に支払われた給与は、全国の81,667円に対し沖縄は30,730円で、全国の37.6にとどまります。月々の給与の差が小さくても、夏の賞与を含めると年収ベースの差は大きくなります。なお、沖縄の医療業に限ると、所定内給与は284,646円、特別に支払われた給与は56,614円でした。

パートタイム労働者の1時間当たりの所定内給与を試算すると、沖縄の医療・福祉は約1,396円(所定内給与109,344円÷所定内労働時間78.3時間)、全国は約1,779円(135,959円÷76.4時間)で、全国の約8割です。

※ パートタイム労働者の時間当たり給与は、付表7-1・付表9-1(沖縄)、全国確報 第1表・第2表の医療,福祉の値から当所が算出した試算値です。

3.沖縄の「▲4.6%」をどう読むか

沖縄の医療・福祉の所定内給与は、本系列で前年同月比▲4.6%、現金給与総額は▲6.1%、きまって支給する給与は▲3.5%でした。数字だけを見ると賃金が大きく下がったように見えますが、そのまま受け取ることはできません。

一つ目の理由は、働く人の構成が大きく変わっていることです。沖縄の医療・福祉のパートタイム労働者数は25,000人で前年同月比▲9.9%、一般労働者数は84,119人で▲2.0%でした。パートタイム労働者の現金給与総額は▲21.2%、総実労働時間は▲12.1%と大きく動いており、短時間で働く人の顔ぶれが入れ替わった影響が表れていると考えられます。二つ目の理由は、調査対象事業所の入れ替わり(標本の入替)です。沖縄の医療・福祉は対象事業所が少なく、事業所が入れ替わると平均が大きく振れます。

図2  沖縄の医療・福祉と調査産業計の所定内給与(本系列)の推移

図2 沖縄の医療・福祉と調査産業計の所定内給与(本系列)の推移。医療・福祉は24万円台から25万円台の間で上下しており、1年前(253,656円)と比べて一貫して下がり続けているわけではありません。前年同月比は令和7年7月の+10.2%から令和8年7月の▲4.6%まで大きく振れています。

実際に、沖縄の医療・福祉の所定内給与の前年同月比(本系列)は、令和7年7月+10.2%、令和8年1月+2.0%、2月+9.8%、6月+4.4%、7月▲4.6%と、月ごとに大きく振れています。沖縄県の資料には業種別の共通事業所ベース(実勢)の掲載がないため、沖縄の医療・福祉の実勢の伸びは統計からは判断できません。単月の数字で一喜一憂せず、自法人の賃金を職種別・雇用区分別に確認することが大切です。

※ 出典:沖縄県地方調査 付表1-1(令和7年7月分〜令和8年7月分の各月、医療,福祉・規模5人以上)、付表3-1・付表7-1・付表11-1(令和8年7月分)。

4.全国の医療・福祉:報酬改定のあとに伸びが高まる

全国については、同じ事業所どうしで比べた実勢(共通事業所ベース)を業種別に確認できます。医療・福祉の所定内給与の前年同月比は、令和7年7月から12月まで+0.7%〜+1.1%と、全産業(+2.0%〜+2.4%)を大きく下回っていました。同じ時期の物価上昇は+2.4%〜+3.6%で、医療・福祉の実質は大きなマイナスでした。

令和8年に入ると伸びが高まり、報酬改定が施行された6月は+2.7%、7月は+2.8%となりました。物価上昇+2.2%を差し引いた7月の実質は約+0.6%で、プラスには転じたものの幅は小さく、全産業の+3.1%にはなお届いていません。

図3  全国の所定内給与の前年同月比(共通事業所ベース)と物価の推移

図3 全国の所定内給与の前年同月比(共通事業所ベース)と物価の推移。医療・福祉は令和7年を通じて全産業を大きく下回っていましたが、令和8年に入って伸びを高め、報酬改定後の6月・7月は+2.7%・+2.8%となりました。

全国・所定内給与(実勢・共通事業所) 医療,福祉 調査産業計
名目(前年同月比) +2.8% +3.1%
物価の上昇(持家の帰属家賃を除く総合) +2.2% +2.2%
実質(試算) +0.6% +0.9%

※ 出典:全国確報 参考資料(共通事業所による前年同月比)、付表(消費者物価指数の前年同月比)。実質は名目から物価を差し引いた当所の試算値です。全国の医療,福祉の共通事業所ベースは、現金給与総額+2.9%、きまって支給する給与+2.6%でした。

令和8年6月施行の報酬改定(賃上げ関連)

診療報酬は令和8年度に+2.41%の改定となり、6月から施行されました。医療従事者の賃上げとして令和8年度・9年度それぞれ3.2%のベースアップを支援し、他産業との人材獲得競争に直面している看護補助者と事務職員は5.7%のベースアップを目指すとされています。介護報酬は期中改定として処遇改善加算が拡充され、6月1日から施行されました。対象を介護職員から介護従事者全体に広げ、介護職員については月最大1.9万円(6.3%)の賃上げの実現を目指すとされています。

※ 出典:労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド」2026年3月号、日本医事新報社ニュース(2026年2月21日更新)ほか。詳細な算定要件は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

全国の実勢の伸びが6月から高まったことは、報酬改定による賃上げが実際の給与に反映され始めた可能性を示しています。ただし、加算による賃金改善は一時金や手当で後からまとめて支給される場合もあり、毎月の所定内給与だけでは全体像がつかめない点に注意が必要です。

5.労働時間と雇用

医療,福祉(令和8年7月) 沖縄 全国
総実労働時間 138.5時間(▲3.6%) 132.5時間(▲1.6%)
所定内労働時間 134.7時間(▲3.3%) 127.8時間(▲1.6%)
所定外労働時間 3.8時間(▲13.7%) 4.7時間(▲2.0%)
常用労働者数 109,119人(▲4.0%) 8,570千人(+1.4%)
パートタイム労働者比率 22.9%(△1.5ポイント) 33.82%(+1.20ポイント)
入職率/離職率 1.50%/0.86% 1.49%/1.26%

※ 出典:沖縄県地方調査 付表3-1・付表5-1、全国確報 第2表・第3表(規模5人以上)。かっこ内は前年同月比(パート比率は前年同月差)。

沖縄の医療・福祉の総実労働時間は138.5時間で、全国の132.5時間より長い水準です。所定外労働時間は3.8時間と短く、残業で調整するよりも、所定の勤務時間のなかで人員配置をやりくりしている様子がうかがえます。パートタイム労働者比率は22.9%で、全国の33.82%を大きく下回ります。沖縄の医療・福祉は一般労働者(フルタイム)の比率が高い分野です。7月は入職率1.50%が離職率0.86%を上回りました。

6.最低賃金の引き上げとの関係

沖縄の最低賃金は、令和8年12月2日から時給1,086円(現行1,023円から63円、+約6.2%の引き上げ)となります。医療・福祉のパートタイム労働者の時間当たり給与は平均約1,396円(試算)で最低賃金を上回っていますが、平均には看護師などの専門職も含まれます。介護助手、看護補助、調理、清掃、送迎など、時給が最低賃金に近い職種では、改定後の時給を下回らないかの点検が必要です。

また、最低賃金の引き上げで補助的な職種の時給が上がると、資格や経験のある職員との差が縮まります。処遇改善加算やベースアップの財源をどの職種にどう配分するかは、最低賃金の改定とあわせて検討することが大切です。

※ 最低賃金は沖縄労働局の決定(令和8年9月25日、琉球新報ほか報道)による。

7.法人としてできること

まず足元の実務として、12月2日の最低賃金改定への対応があります。11月のうちに、パート・アルバイトを含む全職員の時給が1,086円を下回らないかを点検し、月給者も月平均所定労働時間で割った時間額を確認します。下回る場合は賃金規程・雇用契約・労働条件通知書の改定を準備します。

第一に、報酬改定による賃金改善が、実際に職員の給与に届いているかを確認することです。処遇改善加算やベースアップ評価料の算定額と、職員に支払った賃金改善額が見合っているか、どの職種にどう配分したかを整理しておくと、実績報告にも職員への説明にも役立ちます。第二に、賞与の設計です。沖縄の医療・福祉の月々の給与は全国の9割を超えますが、賞与は全国の37.6にとどまります。一時金で支給している加算分の扱いも含め、賞与と月給の配分を見直す余地があります。

第三に、定着に向けた働きやすさの整備です。賃金の底上げを基本としつつ、それと並走する形で、夜勤や休日の負担への配慮、休暇の取りやすさ、治療と仕事の両立支援、職員の健康づくりに取り組むことが、採用と定着の両面で法人の力になります。「うちなー健康経営宣言」への参加など、健康経営の取組みを対外的に示すことも、人材確保の後押しになります。具体的な制度設計は、法人の実情に合わせてご一緒に検討できます。

この解説レポートの監修
社会保険労務士 江尻事務所
健康経営エキスパートアドバイザー 医療労務コンサルタント

社会保険労務士として、医療法人・社会福祉法人の賃金設計、処遇改善加算の配分と賃金規程への反映、最低賃金改定への対応まで、沖縄の法人の実情に合わせて伴走支援します。健康経営エキスパートアドバイザーとして、職員の健康づくりや治療と仕事の両立支援、「うちなー健康経営宣言」への取組みも、予防的な観点からお手伝いします。

医療・福祉の労務のご相談は、江尻事務所へ

処遇改善加算の配分や賃金改善の設計、最低賃金改定への対応、職員の健康づくりや両立支援の制度づくりなど、本ページに関連するご相談を承っております。江尻までお気軽にご相談ください。

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【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和8(2026)年7月分結果確報」(令和8年9月28日公表、全国・規模5人以上)、沖縄県企画部統計課「毎月勤労統計調査地方調査結果」令和8年7月分(令和8年9月30日公表、規模5人以上、本系列・共通事業所参考系列)、沖縄県企画部統計課「毎月勤労統計調査地方調査結果」令和7年7月分〜令和8年6月分(医療,福祉の推移)。報酬改定は労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド」2026年3月号、日本医事新報社ニュースほか。最低賃金は沖縄労働局の決定(令和8年9月25日、琉球新報ほか報道)、沖縄地方最低賃金審議会 答申(令和8年9月3日)および厚生労働省 令和8年度地域別最低賃金の目安。

【注記】数値は原資料の値をそのまま記載しています(四捨五入していません)。前年同月比のマイナスは「▲」、前年同月差のマイナスは「△」で表記しています。全国比・実質賃金・パートタイム労働者の時間当たり給与は原典の数値をもとに当所が算出(試算)しました。沖縄県の資料には業種別の共通事業所ベースの掲載がないため、沖縄の医療,福祉は本系列の値です。物価の変化率は各指数の公表値を採用しています。本系列の前年比は標本入替・構成変化の影響を含むため、実勢は共通事業所ベースで確認しています。

本レポートは厚生労働省・沖縄県ほかの公表資料を基に、社会保険労務士・医療労務コンサルタント・健康経営エキスパートアドバイザーの江尻事務所が顧問先向けに解説したものです。

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